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実は「野球の国」だった中米ニカラグア WBC初出場、元甲子園球児が見た小国の野球熱

プロリーグが行われるニカラグアのスタジアム【写真:本人提供】
プロリーグが行われるニカラグアのスタジアム【写真:本人提供】

ニカラグアプロ野球選手の平均月収とは、学生には厳しい球数制限も

 国内プロリーグは20チーム。試合は集客のできる毎週土、日曜しか行われないが、2日ともダブルヘッダーだ。引き分けありの7イニング制と短い。2月半ばから総当たりで順位を決め、上位によるポストシーズンが終わるのは10月になる。

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 さらにこれとは別に11月から1月中旬まで、選抜された実力者だけの5チームで大会を開催。トップ選手は1年中、公式戦に出場する。河合さんの肌感覚では、中堅チームの実力は日本で甲子園に出場できるかどうか。上位チームでも、「大阪桐蔭が勝つのでは」とプロとしてレベルは高くない。

 それでも、男の子のなりたい職業では常に上位。「お金を稼ぐ手段として頑張っています」。実力によってバラつきはあるが、リーグ戦に出場するプロ選手の月収はおおよそ1000ドル。国民の平均月収400ドルと比べると、夢のある職業だ。

 カテゴリーは7歳以下、12歳以下、14歳以下、16歳以下、18歳以下、23歳以下と日本よりも細かく分類。各年代に約20人のチームが20チームほどある。単純計算なら23歳以下の競技人口は約2400人。U23代表のブルペンコーチも務めた河合さんは、指導文化の違いを見た。

「男子野球の8割くらいは、日本のように勝利が目的ではなく、個々のレベルアップを目指しています。日本なら勝ちたい時にどうしてもエースを投げさせたいですが、こちらでは球数がしっかり制限されています。公式戦でも制限を超えたら絶対に投げさせない。他の投手にチャンスを与える方針です。もちろん、優勝できたらいいですが、特に学生野球では絶対に無理をさせません」

 勝利のために腕を振り、犠牲心を持ってチームに尽くすことが正解。そんな日本の野球文化で育ってきた河合さんには新鮮だった。

 最近では18歳の投手がヤンキースと契約した。制球力が未熟で試合でも四球を連発。「日本だったらすぐに交代させられる。高校によっては『走ってろ』とか言われて」と、出場機会をもらえないはずの選手だった。それでも、球数制限の範囲内で登板。「その選手の将来のために凄く大事に育てていました」。ポテンシャルを評価され、夢への第一歩を踏み出した成功例になった。

 実は1996年アトランタ五輪でキューバ、日本、米国に次ぐ4位の実績を持つニカラグア。今回のWBCは昨年10月の予選を勝ち上がり、本戦初出場を果たした。ナショナルズで昨季60登板、防御率2.92の右腕エラスモ・ラミレス、ヤンキースで同50登板した右腕ホナタン・ロアイシガ、6シーズンで通算27本塁打のチェスラー・カスバート内野手などMLB経験者もメンバー入り。タレントは少しずつ増えつつある。

「野球はお金を稼ぐ手段」とだけ記せば、少し乾いた表現に思えるが、河合さんは「その中でも練習では笑顔が多く、常に楽しくやっている印象を凄く感じますね」と中身は異なるという。

「こちらにいてより感じるのは、やっぱり野球って楽しむものなのかなと。日本でバリバリやっていた時は、チームが勝つためでした。例えば、昔だったら怪我をしてもチームのために試合に出る。どこかで野球が楽しくなくなっちゃいますよね。野球を始めた時って、ただ楽しくて始めた。そういう想いを持ち続けることが大事だと思います」

 河合さんが小学3年で初めて野球チームに入った日。いきなり試合に出させてもらった。右打席に入り、振り遅れたボールが一塁線をヒョロヒョロっと抜ける。人生初打席で初安打。「凄く嬉しくて、それが楽しかった」。ベンチが大盛り上がりした喜びは、22年が経っても鮮明に覚えている。

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