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青学大Vの裏に厚底シューズ対策 活かし切れなかった機能性、1年間の筋トレ改革が成就

合宿所で自主的に下半身の筋トレに励む若林宏樹【写真:中野ジェームズ修一氏提供】
合宿所で自主的に下半身の筋トレに励む若林宏樹【写真:中野ジェームズ修一氏提供】

負担が増えたトレーニング、成果の「見える化」でモチベーション向上

 今回の変更によって、トレーニングによる下肢への負担はかなり増加。当初は、「疲れて走りに影響する」と訴える選手が数名出ました。

 選手たちには新しいトレーニングの目的と効果を説明していますが、トレーニング内容を大きく方向転換することは、当然、抵抗感や怖さを伴います。疲労が出ることはトレーナー陣は想定していたものの、当の選手たちは不安だったに違いありません。それでも、信じ、続けてくれたおかげで、次第に筋肉も適応。選手たちもだんだん、疲労を引きずらなくなりました。

 また、厳しいトレーニングを続けてもらうには、モチベーションを保つことも非常に重要です。特に「筋肉量が上がる=タイムが向上する」という絶対的な相関関係はないので、「何のためにこんなつらいトレーニングをしなければいけないのか?」と思う選手も出てきます。

 そこで、2か月に1度、エコーを使い筋肉の厚みを測定し、トレーニングの成果を「見える化」。実際、トップの選手ほど成果が見られたため、選手たちのトレーニングに向かうモチベーションは上がりました。

 また、バーベルラックとエンコンパスをあえて合宿所の食堂の目の前に設置。これは、「他の選手がトレーニングをする姿を見せることは、やる気につながる」という、原監督の奥様である美穂さんの提案です。さすが、選手をよく知っています。その提案は見事に当たり、やるかやらないかは個々の主体性に任せていた下肢やエンコンパスのトレーニングをやる選手は、日に日に増えていきました。

 トレーニングの成果は夏合宿の頃から見え始め、選手からも「四頭筋、殿筋を使いながら走れるようになりました」という声が聞かれるようになります。そして、2位で終えた10月の出雲全日本大学選抜駅伝では、選手の走りは殿筋の安定力、大腿四頭筋の使い方ともに、厚底シューズにしっかり対応できていました。

 その後、11月の全日本大学駅伝でも準優勝。ここで、順位を安定して残せたこと、そして、厚底シューズになってから増えていた中殿筋の張りや、仙骨の疲労骨折を起こした選手が数名で抑えられたことから、トレーニングの成果が出ているという手応えをしっかり感じられました。

 私自身、このトレーニングプランは初めての試みです。方向性をまったく勘違いしているのでは? という不安は常にありました。故障者が続出するのではないか、走りがぐちゃぐちゃになるのではないか、ピーキングを誤り、大崩れして順位が出ないのではないか……。悪い夢にうなされることも、何度もありました。

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中野ジェームズ修一

スポーツトレーナー

1971年、長野県生まれ。フィジカルトレーナー。米国スポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。日本では数少ないメンタルとフィジカルの両面を指導できるトレーナー。「理論的かつ結果を出すトレーナー」として、卓球・福原愛、バドミントン・藤井瑞希らの現役時代を支えたほか、プロランナー神野大地、トランポリン競技選手など、多くのトップアスリートから信頼を集める。2014年以降、青山学院大駅伝チームのフィジカル強化指導を担当。東京・神楽坂に自身が技術責任者を務める会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB100」がある。主な著書に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(サンマーク出版)、『青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ』(徳間書店)、『医師に「運動しなさい」と言われたら最初に読む本』(日経BP)などベストセラー多数。

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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