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ラグビー日本に吹き始めた4年前の旋風 格上アルゼンチンと天王山、命運握る「FW第3列」の奮闘

安定したタックルが生み出す日本のリズム

 FW第3列を称えるのなら、トライはもちろんだが、むしろ日本が目指すスピードのあるアタックを生み出した、接点からテンポのある球出しができたことだろう。密集への集散など機動力でも善戦したが、FW戦での激しいファイトが、日本のアタックを加速させた。

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 防御のデータだが、サモア戦のタックル回数を見るとラブスカフニ18回、リーチ17回、姫野15回と日本のバックロー3人が上位を独占している。ミスタックルも3人でわずか2回という数字で、勝利を支えるバックボーンになる働きを見せた。W杯でなかなか勝てなかった時代には、攻守に接点で力負けして重圧を受けてしまうのが宿命だった。苦戦続きだった7、8月の代表戦でも球出しのテンポアップが不十分だった日本代表だが、W杯に入ってからようやくギアが上がってきた。

 タックルのデータは、開幕からの試合を見ても目を見張る。チリ戦では出場停止のラブスカフニに代わりNO8で先発したジャック・コーネルセン(埼玉パナソニックワイルドナイツ)がトップの19回、LOアマト・ファカタヴァ(リコーブラックラムズ東京)が16回、リーチは15回をマーク。イングランド戦もラブスカフニの19回、リーチ17回、姫野とコーネルセンの16回と、すべての試合で日本代表が少なくともトップ4までを独占している。タックル回数が多いのは、相手の攻撃回数の多さも示しているが、ここまでの3試合で平均失点22、失トライ数3という数字になんとか抑え込めているのは、3列の働き抜きには語れない。

 100%の完成度とは言えないが、イングランド戦でスクラム、防御と成果を見せ、サモア戦ではスピードのある組織攻撃と、日本が決勝トーナメントに勝ち上がるために必要なパズルのピースが、プール戦3戦目にしてようやく揃ってきた。急遽先発メンバー入りして、パスで攻撃をテンポアップさせたSH齋藤直人(東京サントリーサンゴリアス)は、試合後のコメントでチームの進化に触れている。

「イングランド戦から成長できたのは、キックゲームの中で、こぼれ球の獲得や精度高くアタックチャンスで取り切るところ。サモアの土俵で戦ってしまうと、必ず相手のほうが強いので、クイックテンポとボールを相手の裏に蹴ることを意識して戦った」

 接点での局地戦は極力回避してボールを動かし、相手防御の薄いエリアを突くか、スピードで振り切ろうという日本のアタックが、ようやく蘇ってきたのがサモア戦の収穫だろう。

 何度も触れてきたように、2019年大会での日本の躍進を支えたのは、他国よりじっくりと時間をかけて仕上げた組織力だった。ニュージーランドのトップアスリートしか選ばれない同国代表オールブラックス経験者ながら、「オタク」級のマニアックさで緻密な組織プレーを編み出すトニー・ブラウン・アシスタントコーチ(AC)の頭脳と、日本選手の細やかさ、忠実にプレーをやり切る気質が生んだ1つの完成形が2019年の日本代表だった。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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