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消えた“勝ち点1”に見えた難敵サモアの脆さ ラグビー日本代表、W杯D組突破へ次戦突くべき弱点

重要な局面でサモアが犯した不用意な反則

 その一方で、サンテティエンヌでのアルゼンチンとのバトルからは、日本が7月の対戦とは違う結果を得られる可能性も読み取ることができた。

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 スコアを見るとサモアの惜敗と感じられるが、後半残り5分まではアルゼンチンに3-16とノートライに封じ込まれていた。後半35分にサモアがパワフルな肉弾戦からこの試合で初めてトライ(ゴール)を奪って6点差に肉薄。しかし終了直前にセンターライン付近でのブレークダウン(接点でのボール争奪)で反則を犯し、アルゼンチンの英雄、SOニコラ・サンチェスに50メートルを超えるPGを決められ突き放された。

 この終盤の攻防が、この先の日本代表の順位に大きく影響する可能性を秘めている。サモアが6点差とした時点では、負けても得点差によるボーナスポイントの1点を獲得できていた。だが、終了目前の不用意な反則で、そのボーナスを手離すことになったのだ。23日の試合を終えた時点で、サモア、日本が勝ち点5、アルゼンチンが勝ち点4という混戦模様の中で、この1ポイントが順位を変える可能性が十分にある。同時に、サモアが重要な局面で、あまりにも不用意に反則を犯したことも、日本はプラス材料と考えるべきだろう。

 この試合では、両チームともかなりの量のハンドリングミスを犯している。日本のクボタスピアーズ(現・クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)でパワフルなCTBとして活躍したサモアのセイララ・マプスワ・ヘッドコーチ(HC)は「雨の中での試合でアルゼンチンが上手く対応していた。我々は終盤良かったが、時間が足りなかった」と悔やむ一方で、中5日という短期間で迎える日本戦へ「チームをリフレッシュさせて臨みたい。この試合で出たたくさんのミスを減らさないといけない」とプレー精度の向上を課題と認めている。

 サントリーなど日本の4チームでプレーした経験を持ち、2018年シーズンを神戸製鋼(現・コベルコ神戸スティーラーズ)でプレーした先発WTBのナイジェル・アーウォンも「ミスの多い試合。雨と相手が強豪のアルゼンチンということも影響したと思う。でも、7月の試合も含めて日本戦はもう少しミスの少ない試合ができると思うし、日本のスピードは警戒するが自信もある」と、アルゼンチン戦とは違う戦いになると考えている。193センチ、104キロのアーウォンと194センチ、114キロのベン・ラムという大型WTBは、キッキングゲームになると要警戒な存在でもある。

 日本代表もイングランド戦後のコラムで触れたように、アタック精度はベスト8まで勝ち上がった前回大会ほどの完成度には達していない。しかし、ディフェンスに目を向けるとイングランド相手に、ゴール前でも粘り強くタックルを繰り返して相手のミス、反則を誘うプレーを見せ続けた。日本は、ニュージーランド代表のように選手個々のスキルと、コンビネーションを使って接点をずらすような攻撃には弱いが、直線的に走り込んでくる相手への防御は2015年大会から段階的に対抗できるようになってきた。自分たちのフィジカルの高さを生かそうとシンプルに縦に走り込んでくるサモアのアタックを、ある程度は封じることができる期待は高まっている。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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