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運動技能も睡眠により向上 ジュニア世代の成長・発達に重要な「眠活」前編

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プロゴルファーの石川遼も理想的な習慣があった!?

(2)睡眠中に脳が創られる

 赤ちゃんが眠っているときに、まぶたをパチパチしたり、にっこりと笑ったりすることがありますね。さらに手を伸ばしたり、ものを握ろうとしたりする様子もみられます。赤ちゃんは、生まれてすぐから、泣いて母親を呼んだり、哺乳したりすることが必要です。このような、動作ができるように、神経回路をつくるのが睡眠の役割と考えられています。

 生まれたばかりの人間は未熟です。新生児の脳は400グラムほどで成人の脳の1/4ほどですが、半年後には倍の重さになり、4~5歳で1200グラムと成人の脳の90%近くの大きさまでなります。ことわざに、「三つ子のたましい、百までも」というのがありますが、この新生児期から小児期の睡眠が脳の発育にとても重要であることが推測されます。

 睡眠には「脳を創り、育てる」機能があり、「子どもはよく眠る」というより「子どもはよく眠らなければならない」のです。

(3)睡眠は記憶向上に大切

 睡眠は記憶向上に重要であることが、近年明らかにされています。単語記憶と睡眠の関係を調べた研究があります。夜の10時15分から11時まで学習し、その後3時間の睡眠をとったグループと、睡眠をとらずそのまま3時間起きていたグループで比較すると、眠ったグループの方が、眠らないで起きていたグループに比べて、記憶率が良いことがわかりました。つまり、一夜漬けをするよりも、勉強を早めに終えて記憶定着のために睡眠時間を確保することが大切です。

 また、運動技能も睡眠により向上することがわかっています。プロゴルファーの石川遼選手は、子どもの頃から父親と一緒に夕方と早朝に練習していました。高校生の時には、朝5時起床、夜は8時に就寝していました。つまり夕方の練習後に十分な睡眠をとることは、ゴルフ技術を向上させる理想的な習慣であったといえます。

 睡眠の長さは学習成績にも関係しています。小学生の就寝時刻と学力偏差値のかかわりをみると、午後8時から9時までに就寝する子供たちの偏差値が最も高く、就寝時刻が遅くなるにつれて低下していました(山陽小野田市教育委員会調査、2006)。しかし、午後8時までに就寝している場合も偏差値が低かったのです。睡眠が短いのは良くないのですが、長すぎてもよくありません(体調が悪くて長く寝ていたのかもしれません)。

 しかし、睡眠時間は一律でなく、年齢や個人の体質に応じてその子どもにあった睡眠時間を知ることが大切です。朝自然に目覚め、疲れがなく、昼間に普通に活動できていれば睡眠は足りていると考えます。朝から眠気があったり、イライラしたり、疲れがある場合は睡眠が足りていないと考えます。

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宮崎 総一郎

中部大学生命健康科学研究所教授

1979年3月 秋田大学医学部卒業、1985年3月 秋田大学大学院博士課程修了、1992年3月 国立水戸病院耳鼻咽喉科 医長、1998年9月 秋田大学耳鼻咽喉科 助教授、2004年4月 滋賀医科大学睡眠学講座 特任教授、2009年9月 日本睡眠教育機構 理事長、2012年4月 放送大学 客員教授併任、現在に至る。

専門は鼻呼吸障害と睡眠、睡眠時無呼吸症候群、睡眠教育。現在、睡眠健康指導士Rの育成と睡眠障害の包括的医療、睡眠学の啓発活動に学内外で取り組む。著書に「伸びる子供の睡眠学」(恒星社厚生閣)、「睡眠のトリビア」・「睡眠のトリビア2」(中外医学社)、「徹夜完全マニュアル」(中経出版)、「病気の原因は『眠り』にあった」(実業之日本社)など多数。

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