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「自分の泳ぎを見つけて」 元競泳・伊藤華英さんが被災地で「夢」を乗せた「1年後の約束」

公益財団法人東日本大震災復興支援財団は約1年の間、東北の子どもたちを対象にアスリートやプロコーチらによるスポーツ指導の受講機会を提供する「東北『夢』応援プログラム」を実施している。その一つが、岩手県大船渡市の小中学生を対象とした水泳指導プログラム。2年目を迎えた今年、昨年に続いて講師を務めることになったのは、長く日本競泳会に貢献してきた元日本代表・伊藤華英さんだ。

「東北『夢』応援プログラム」で岩手県大船渡市で“1年間”の水泳教室を開始

 公益財団法人東日本大震災復興支援財団は約1年の間、東北の子どもたちを対象にアスリートやプロコーチらによるスポーツ指導の受講機会を提供する「東北『夢』応援プログラム」を実施している。

 その一つが、岩手県大船渡市の小中学生を対象とした水泳指導プログラム。2年目を迎えた今年、昨年に続いて講師を務めることになったのは、長く日本競泳会に貢献してきた元日本代表・伊藤華英さんだ。
 
 伊藤さんは、2008年に女子100メートル背泳ぎで日本記録を樹立し、同年の北京五輪に出場。翌09年には怪我の影響により、背泳ぎから自由形に転向。世界選手権、アジア大会での数々のメダル獲得を経て、12年ロンドン五輪では自由形で代表の座を射止め、2大会連続出場した経歴を持つ。

 そんな競泳の元トップ選手が指導する「夢」の水泳教室も、この日が1年間の始まりだった。

 本プログラムでは、毎日、直に接して指導するのではなく、スマートフォン上の動画を通じて1対1の個別指導を続け、子供たちが設定した目標に少しでも近づける――という画期的なコンセプトだ。

前日にクロール7mができるようになった小2生徒が一気に25m完泳に成功

「きれいなフォームで泳ぐと、自然とタイムも速くなる。そのためにまず、蹴伸びをしっかりすることが重要。次はキックをしっかりと。キックは水面の上に足をあげないで、下にしっかりと蹴り下げて強いキックをすることが重要です」

 この日は速く泳ぐためには「きれいな泳ぎを意識すること」を生徒たちに伝えた伊藤さん。基礎のポイントを重点的に指導していった。

 クリニック後には、生徒全員の動画撮影とタイム測定を実施。前日に「やっと7メートルのクロールができるようになった」という小学2年生の生徒が、伊藤さんの1時間の指導で一気に25メートルまで記録を伸ばすことに成功した。

「今日の指導で記録が伸びたことはとても嬉しい。蹴伸び、キックのコツを掴んで練習を積んでいけば、子供たちはすぐに記録を伸ばせるし、タイムも速くなります」と伊藤さん。最初は緊張していた生徒たちの表情も喜びへと変わっていった。

 生徒からの質問コーナーでは、小学校時代どんな子供だったかと問われると「小学校時代は、人と競争するのが得意ではなかった。なのに、競争しなければいけない競技になってしまった」と本音トークで笑いを誘った。

「また来年もここに来ます」…伊藤さんが子供たちと交わした「1年後の約束」

 この日、参加した子供たちは、将来の夢、そして1年後の約束を次々と宣言した。その夢や目標に少しでも近づくために、伊藤さんも全力でサポートする覚悟だ。

 将来は「設計士になり、どこの町からも注目されて安全に過ごせる町にしたい」という夢を持つ小学3年生の山口諒介君は「背泳ぎで腕をしっかりと伸ばして、バシャンという音を立てたり、泡を立てないで泳げるようにする」と、力強く伊藤さんとの「1年後の約束」を宣言した。

「目標を達成するために、いつまでにこうなるんだというリミットを決めて取り組んでいくのも良いと思います。その中で自分の泳ぎを見つけて下さい。今日は1時間の練習だけでもすごく泳げるようになりましたね。1年後にはもっと上手になっています。

 また来年もここに来ますので、今日宣言した1年後の約束に近付いていられるように、私もみんなの映像を見て、一生懸命アドバイスをしていきます。今日が終わりではなくスタートです。みんな夢や目標に向かって頑張っていきましょう」

 そう訴えた伊藤さん。たった1時間の指導でも成長を見せた子どもたちは1年間、これからどんな成長を遂げていくのか。この中から未来の日本代表選手が生まれるかもしれない。

【了】

ジ・アンサー編集部●文 text by The Answer
村上正広●写真 Photo by Masahiro Murakami

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