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2社の社長になった元ロッテ投手 1個30円のコロッケ揚げで得た第二の人生に必要なこと

プロ入り前はスーパーの総菜売り場でコロッケを揚げていた。当時の経験が今に活きている【写真:本人提供】
プロ入り前はスーパーの総菜売り場でコロッケを揚げていた。当時の経験が今に活きている【写真:本人提供】

コロッケ揚げの経験で感じた「数円の違い」の効果

 長年携わってきた野球界への思いは強い。競技人口の減少に対し、観戦人口は増えていること。インターネットを利用して野球に触れる人が増えていること。プロ野球選手以上に有名な野球YouTuberが生まれていること。競技を取り巻く環境は、物凄いスピードで変化している。

 選手のセカンドキャリアも変わらなければならない。引退して感じているのは、現役時代の“備え”の重要性だ。

「高卒の選手がめちゃくちゃ美味しいステーキを食べられる世界なんです、プロだから。でも、必ず終わりはくる。終われば、同じステージにはビジネスで行くしかない。本当は現役の時に、ビジネスや金融リテラシーの勉強をしておかないといけないけれど、やっていなくて終わった後に何をしていいかわからない人も多い。

『資本はあるから飲食店をやろうか。名前でお客さんは来るだろう』。来るわけがないじゃないですか。野球と同じで、素人がプロに勝てるわけがない。中には経験して勉強して、ブランディングしながらやっていける人もいる。でも、何をしていいかわからず、サラリーマンになっても不完全燃焼でやっている子もいます」

 一流選手は、現役を終えても解説などの仕事がある。「それ以外の98%は、現役中から考えないとダメだと思います」。野球から離れても成功している元選手は、引退前から頭を使い、自ら行動している人が多いと感じている。

 香月さんを支えていたのは、プロ入り前の“コロッケ揚げ”の経験も1つだ。第一経済大を卒業後に鮮ど市場に入社。同社が立ち上げた熊本ゴールデンラークスで野球をしながら、店舗の総菜売り場に勤務し、1日数百個のコロッケを揚げるなど8時間働いていた。

「1個30円のコロッケが皆さんのおかずになりますが、価格が数円でも上がったら買わない、安かったら買うってあるんですよね。価格、売れ行きなどの関係性を自然と見て、ビジネスに触れていた。自分で事業を作りたいと思ったのはその経験が大きいですね」

 華やかなプロの世界に足を踏み入れても、社会人時代の体験が香月さんを正していた。活躍するための努力は惜しまない。でも、選手を辞めて働く時は必ず来る。将来から逃げず、考え続けていた自身の経験も踏まえ、「BeARプロジェクト」にセカンドキャリアに関する思いを込めた。

 今、プロジェクトが最も求めているのは協賛企業。一緒に農業を盛り上げていく思いから「応援隊」と呼んでおり、6月の本格始動直後から3社の支援を受けている。企業にとってはCSR活動(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の一環になるほか、eスポーツ参入を通じて全国発信もなされるなど、様々なメリットがある。

 今はまだ「入団1年目の勝負の年」と表現した香月さん。前例のないチャレンジが一石を投じるものであることに間違いはない。今後、全く違う3領域をどう絡めていくのか注目したい。

■香月良仁(かつき・りょうじ)/e-spear代表取締役社長

 1984年1月22日、福岡県出身。柳川高2年時に1学年上の兄・良太とともに春の甲子園に出場。第一経済大を経て、2006年に鮮ど市場に入社。同社が発足させた熊本ゴールデンラークスでプレーした。08年ドラフト6位でロッテに入団。10年にプロ初勝利を記録した。15年には中継ぎとして40試合に登板し、防御率2.92をマーク。故障の影響もあり、16年10月に戦力外通告を受けた。17年から鮮ど市場ゴールデンラークスに復帰。18年まで投手としてプレーを続けながら、熊本でスポーツ、農業などの事業にも触れた。19年GM補佐を経て、20年にR&Associatesを設立。21年1月からe-spearの代表取締役社長に就任した。現役時代の身長・体重は180センチ、82キロ。右投右打。

(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)

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