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怪我、解雇、そして… 川口能活が告白する「3つのターニングポイント」とは

「今も僕の中に生きている」―人生そのものに影響を与えた“あの人の言葉”

 現役続行さえ危ういかもしれない――。そんな最悪のシナリオも頭によぎるが、年が明け、ようやくいくつかのチームから契約の話が持ちかけられる。そして、14年のシーズン、旧知の存在であるラモス瑠偉から直接、声をかけられたこともあり、彼の監督就任が決まっていたJ2のFC岐阜と契約を結んだ。

「3つのターニングポイントで起こった出来事はすべて異なります。ただ、共通しているのは、苦しい状況に追い込まれても、トレーニングだったり体調の管理だったりと、とにかく目の前のやるべきことに集中し、手を抜かずに取り組み続けた、ということです。僕にとって幸運だったのは、“助けてくれ”とお願いをしていなくても、常に手を差し伸べてくれる人たちがいた。コーチやチームメイト、先輩方、そして家族。彼らのおかげで壁を乗り越えることができたし、今の自分がいると思います」

 川口の生きる姿勢に多大な影響を与えた人物の一人に、清水商(現・清水桜が丘高)時代のサッカー部の恩師、大滝雅良氏がいる。その大滝氏が好んで使っていた言葉が「人事を尽くして天命を待つ」。まさに分岐点を迎え、乗り越えた川口の姿勢そのものだ。

「大滝先生は常に“何が起こるかなんてそのときにならないとわからない。まず答えを求めるのではなく、過程を大切にしろ”とおっしゃっていました。大滝先生はどんなに多忙でも体調が悪くても、サッカー部の練習には必ず来ていた。今思えば、毎日の積み重ねが大事だという教えを体現してくれたのだと思います。状況が変わってもやるべきことは変わらない――。先生の姿を見てきた僕のなかにはその言葉が今も生きている。そして、サッカーは勿論、人生そのものにも大きな影響を与えていると思います」

(続く)

<川口能活、初著作「壁を超える」を刊行>

川口は初著作「壁を超える」をこのほど上梓した。

42歳現役選手を支え続けるものとは何か――。順風満帆に見えて、実際は今ほど整っていない環境での海外移籍や度重なる怪我など辛い時期を幾度も乗り越えてきた。メンタルが問われるゴールキーパーという特殊なポジションで自分自身を支え続けるものは何なのか。

第1章 苦境のおしえ
第2章 人を育てるということ、組織(チーム)を率いるということ
第3章 リーダーの肖像 ――指揮官たちに教わったこと
第4章 厳しかった日々と家族の存在
第5章 「現役」であること、「引退」に思うこと

「あの時」、川口は何を思っていたのか――。定価:本体800円+税 ISBN:978-4-04-082166—5

【了】

長島恭子●文 text by Kyoko Nagashima

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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