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「泣き出す選手もいた」 外国人監督の“きつい言葉”は日本人選手へどう伝える?

サッカーに限らず、日本と海外の違いは、忖度が介入するかどうか、なのかもしれない。海外では何か問題が起こればストレートに意見をぶつけ合って解決策を探っていく。だが日本では表沙汰にせず、誰も傷つかない方法を選択しがちだ。そしてこうした伝統の相違は、それぞれのメンタリティーの形成にも影響を及ぼしてきたに違いない。

日本代表監督を務めたフィリップ・トルシエ氏【写真:Getty Images】
日本代表監督を務めたフィリップ・トルシエ氏【写真:Getty Images】

「日本サッカーの父」クラマー氏、通訳を務めた岡野氏が振り返る“ストレートな物言い”

「直訳すると相当にきつくて、最初は悔しくて泣き出す選手もいました」――岡野俊一郎(元日本サッカー協会会長)

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 サッカーに限らず、日本と海外の違いは、忖度が介入するかどうか、なのかもしれない。

 海外では何か問題が起こればストレートに意見をぶつけ合って解決策を探っていく。だが日本では表沙汰にせず、誰も傷つかない方法を選択しがちだ。そしてこうした伝統の相違は、それぞれのメンタリティーの形成にも影響を及ぼしてきたに違いない。

 例えば、欧州から指導者や助っ人選手がやってくると、あまりにストレートな物言いに傷ついてしまう日本人選手が続出した。最初に日本代表を指導したデットマール・クラマー氏は、今でこそ「日本サッカーの父」として尊敬を集めているが、一方で「赤鬼」と陰口を叩かれるほど厳しい指摘が少なくなかった。

 クラマー氏の通訳を務めてきた岡野俊一郎氏は述懐している。

「最初はクラマーも極めてドイツ的な話し方をしていましたからね。彼の言葉を直訳すると相当きつくて、最初は泣き出す選手もいましたよ。例えば、動きの悪い選手に『おい、椅子持ってきてやろうか』と言えば、気の弱い選手にはユーモアと受け取れませんから、私もどう訳したら良いのか、だいぶ勉強になりました。

 駅で電車が止まり、選手たちが窓から次々にアイスクリームを買っている光景を見て、クラマーは言いましたよ。『幼稚園児みたいなことはするな、そう言っておけ』とね。でも代表選手に幼稚園児とは言えません。私は『修学旅行じゃないんだぞ』と伝えました」

 こうした経験を踏まえ、岡野氏は自ら日本サッカー協会(JFA)会長時代に日本代表監督を務めていたフィリップ・トルシエ氏の言葉の訳し方についても助言を与えている。

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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