前代未聞の“誤内定”も…「もっと強くなればいい」 陸上十種・右代啓祐が競技生活に区切り 他人を批判せず、真っ先に気遣う立派な男
被害者のはずが…真っ先に恩師を気遣った
「先生にご迷惑をかけていませんか?」
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というのも、一連の事態が公になったのは右代のX(当時ツイッター)だった。「世界陸上の内定をもらったのに、出発10日前に突然の内定取消しの連絡が入ったみたいです」との投稿。前代未聞の事態に大きな反響となった。それを気にして、右代自身が最も被害者であるはずなのに、まず師を気遣う姿があった。
幸いにも世界選手権は、他国で欠場が出て、右代は追加で繰り上がり出場が決まった。紆余曲折を経て、ドーハの地に立った。7545点の16位。結果は悔しかったが、「2日間があっという間」と表情はすがすがしかった。
十種競技の王者は「キング・オブ・アスリート」と称される。「走る」「投げる」「跳ぶ」。その全てが揃っていないと勝てない競技ゆえ、尊敬を集める。究極の総合力が求められる競技で、右代は日本選手権8度の優勝。五輪は12年ロンドン大会、16年リオデジャネイロ大会と2度出場し、世界選手権も5度出場した。
リオデジャネイロ五輪では左手親指の骨折が癒えないまま旗手の役目を全うした。競技にも影響が出るかもしれない中、大役打診を即答した。その根底には、十種競技を世間に知ってもらいたいとの思いがあった。
8日に更新したXで、右代は最後にこう締めた。
「『引退』という言葉はあまり好きではありません。これは終わりではなく、新たなスタートです。これからも自分らしく、変わらないスタイルで前へ進んでいきます。本当にありがとうございました」
競技者としてだけではない。強さと優しさもまた、多くの人の胸に刻まれている。右代啓祐は新しいステージに進んでいく。
※「誤内定事件」
2019年世界選手権ドーハ大会の出場権を巡るトラブル。右代は参加標準記録(8200点)には届いていなかったものの、同年4月のアジア選手権と6月の日本選手権を制し、日本陸連から世界選手権代表に内定した。当時、日本陸連はアジア選手権優勝者について、参加標準記録を突破した選手と同等に扱えると認識していた。
しかし、世界陸連は、混成競技や1万メートルなど一部種目については例外規定を設けており、各地域王者であっても競技レベルなどを考慮して出場資格の有無を判断すると定めていた。日本陸連はこの規定を見落としており、実際には世界選手権の出場が確定していない右代に内定を出していた。
内定をもらっていた右代は、万全のコンディションで臨むため、世界選手権までの期間に記録を狙う試合へ出場しなかった。ところが、大会直前になってエントリーできないことが判明。最終的に繰り上がりで出場できたが、前代未聞の「誤内定事件」となった。
(THE ANSWER編集部・上田 悠太 / Yuta Ueda)
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