安田記念で「勝ち負け必須」な能力とは 調教捜査官が昨年覇者と「似た馬体」と評した一頭は変身中
競馬の祭典・東京優駿(日本ダービー)の熱狂も冷めやらぬ中、今週は春のマイル王決定戦・G1安田記念(芝1600メートル)が7日、東京競馬場で発走となる。調教を通じてさまざまな視点から過去のG1レースを振り返る企画「調教捜査官の回顧録」を寄稿する競馬ライターの井内利彰氏は、調教もさることながら、今春のG1シリーズで見極めたのは「パドックの大事さ」。そこから導き出される結論とは――。

G1安田記念
競馬の祭典・東京優駿(日本ダービー)の熱狂も冷めやらぬ中、今週は春のマイル王決定戦・G1安田記念(芝1600メートル)が7日、東京競馬場で発走となる。調教を通じてさまざまな視点から過去のG1レースを振り返る企画「調教捜査官の回顧録」を寄稿する競馬ライターの井内利彰氏は、調教もさることながら、今春のG1シリーズで見極めたのは「パドックの大事さ」。そこから導き出される結論とは――。
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今年の春開催東京のG1レースは仕事の環境にも恵まれ、パドックを1周目からしっかりと見ることができている。パドックの解説で「周回を重ねるごとに気合が乗ってきて、いいですね」と評価されているのを聞いたことがあるだろう。私自身もビギナーズセミナーの講師としてお客様にパドックの解説をする時、同じ表現を使うことがある。もちろん、これは対象馬の状態が良いですよ、という意味だ。
しかし、G1に関しては「最初から最後まで変わらない」。これがベストなんだということを感じた。NHKマイルCの◎アドマイヤズーム。周回を重ねるごとに気合が乗ってきて、いい感じかなと思ったが、それに伴い、発汗量も目立ってきた。これは私の勝手な憶測だが、G1のパドックはこれまで経験したことがないような数のお客様の視線を浴びる。しかも東京競馬場のパドックはすごく広いので、その圧は他の競馬場の比にならないくらいではないかと思う。周回を重ねることでテンションが上がりすぎてしまうのか、緊張して発汗量が増えてしまうのか。いずれにせよ、ちょっとしたことが勝敗を左右するG1。アドマイヤズームの場合はレース中の落鉄が凡走の大きな要因ではあるが、過去に東京競馬場でパドック、地下馬道、本馬場入場と経験していれば、また違った結果もあったのかもしれない。
オークスの◎カムニャック。パドックへ入った瞬間「これで負けたら仕方ないよな」という素晴らしい雰囲気。堂々と体全体を使って歩く姿に魅了された。こちらはG2フローラSを勝っているが、その前にG3アルテミスSでも東京競馬場を経験している。馬の状態の良さはもちろんだが、過去に歩いたことがある東京のパドックに慣れているというのも平然とできたような理由な気もする。ジョッキーが騎乗する前にパドックを出てしまったので、そこまでの様子ではあるが、その時点では発汗も目立たなかった。対して、桜花賞馬エンブロイダリーは東京競馬場での勝利経験もあり、パドックでの周回も良好。ただ、周回を重ねるごとに発汗量が目立っていて、やっぱり気持ちの乗りやすいところがあるのかもしれない。
ダービーの◎クロワデュノールも1周目から完璧なパドック。ここは慣れた場所、と言わんばかりに堂々と落ち着いて、凄くゆったりとバランスの良い歩き。これぞ、誰が見ても「素晴らしい」と褒めるしかないパドック。もし、このレースをビギナーズセミナーの講師として出ていたら「この馬が勝とうが負けようが、今日のパドックの姿は素晴らしいので、頭に焼き付けておいてください」と力説していると思う。