子どもがプロになれると思う親はどれだけいる? あまりに甘い夢、期待と課金で不満も…世帯年収で興味深い差が米国で判明
期待と課金が不満を引き起こす
親が甘い夢を抱いているだけなのならばよいかもしれない。しかし、この調査からは親は、目的達成のために子どもが適度な重圧を感じることがあってもよいと考えていることも浮かび上がった。「どのような目標ならば、そのプレッシャーは正当だと感じられるか」という質問に、「大学でプレーするという目標」という回答が37.4%、「プロとしてプレーするためという目標」という回答が24.8%あった。夢を現実に近づけるためには、限られた枠を競わなければいけない。そのためには、競技力を上げなければいけないし、大学やプロのスカウトへのアピールも必要になる。
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たとえば、日本でも、超難関の名門大学に入学するには学力を上げなければいけないし、推薦で入学する場合も、何かアピールできる点が必要になる。そういったものをイメージしていただくのがよいだろう。日本の受験対策で、学校の授業を受けるだけではなく、専門の塾や予備校に通うことが多い。アメリカの大学の強豪運動部を目指すのも、これと同じようなことが起こる。
アメリカでは、学校運動部への参加にも幾分かのお金がかかるが、学校外での競技チームやトレーニングにはもっとお金がかかる。しかし、大学、プロを目指すには、学校の運動部のシーズンオフ期間も、学校外のチームに入ったり、個別にトレーニングしたりしなければいけない。
この調査では、1人の子どものスポーツ活動に年間で1491ドル(約21万円)を支払っていることがわかった。世帯年収5万ドル(約729万円)未満で約890ドル(約13万円)、5万ドル(約729万円)以上10万ドル(約1458万円)未満で約1387ドル(約20万円)、10万ドル(約1458万円)以上で約2361ドル(約34万円)となっている。
前述したように、NCAA1部の運動部に入れるのは、高校生選手のうちの数パーセントであるのに、20%ほどの親が我が子にはNCAA1部に入れる能力があると考えている。我が子はプロになれると考えている親が10%以上いる。こういった親のなかには、プロとして大金を手にすることはもちろん、大学から競技優秀者として奨学金をもらえば、競技向上のためにお金をつぎ込んでも、取り戻すことができるのだと考えている人もいる。つまり、投資をして、リターンを得るという考え方だ。
実際には現実味に乏しい夢であるのに、よりよいトレーニングを受けさせれば夢がかなうだろうと思い違いが起こっている。お金をつぎ込んだのに結果(リターン)を出せないと子どもに重圧をかける親もいるし、私の子どもはプロになれる逸材なのに、コーチのやり方がけしからんと不満をぶつける親もいる。こうした親の思い違いが、アメリカの子どものスポーツの過熱の一因になっているのだ。
(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)
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