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大学ラグビー関東王者が歌舞伎町で朝からゴミ拾い 異色の活動のウラに…セオリーに囚われぬ大東大黄金期復活への道

関東大学ラグビーリーグ戦王者が歌舞伎町でゴミ拾い!? 大学選手権優勝3度を誇り、昨季7シーズンぶりにリーグ戦を制した大東文化大ラグビー部が、新宿・歌舞伎町で清掃活動を行った。“仕掛け人”は就任3シーズン目の酒井宏之監督。大東大OBで、現役引退後は俳優業に挑戦するなどユニークな経歴の持ち主は、何故選手と一緒にゴミ拾いをするのか。異色の指揮官の言葉からは、大学ラグビーで初めて認可された公式戦ジャージーへの広告掲出も見据えた戦略、そしてセオリーに囚われない黄金時代の大東ラグビー復活への思いが浮かび上がる。(取材・文=吉田 宏)

新宿・歌舞伎町で清掃活動を行った大東文化大ラグビー部
新宿・歌舞伎町で清掃活動を行った大東文化大ラグビー部

“仕掛け人”は就任3シーズン目の酒井宏之監督

 関東大学ラグビーリーグ戦王者が歌舞伎町でゴミ拾い!? 大学選手権優勝3度を誇り、昨季7シーズンぶりにリーグ戦を制した大東文化大ラグビー部が、新宿・歌舞伎町で清掃活動を行った。“仕掛け人”は就任3シーズン目の酒井宏之監督。大東大OBで、現役引退後は俳優業に挑戦するなどユニークな経歴の持ち主は、何故選手と一緒にゴミ拾いをするのか。異色の指揮官の言葉からは、大学ラグビーで初めて認可された公式戦ジャージーへの広告掲出も見据えた戦略、そしてセオリーに囚われない黄金時代の大東ラグビー復活への思いが浮かび上がる。(取材・文=吉田 宏)

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 大学ラグビーは4月20日に開幕する関東大学春季交流大会から新たなシーズンを迎えようとしているが、3月のとある火曜日の朝、歌舞伎町では見慣れないモスグリーンのチームウェアを着たむくつけき男たちの姿があった。夜は酔客でごったがえす日本有数の歓楽街に現れたのは、埼玉・東松山市からやって来た大東文化大ラグビー部の選手たち。昨季リーグ戦王者の主力も含む20人あまりが、黙々とゴミ拾いに汗を流した。自らもゴミ拾いに参加した酒井監督が、満面の笑顔でその理由を語り始めた。

「ジムマネジメントさんという会社と、大東文化大、大東一高が繋がりもあり僕らが川越市でのイベントでご一緒させていただいた。その縁で昨季はウォームアップ用ウェアへのスポンサー(広告掲示)をしていただいた。向こうはIT系企業ですから、大学ラグビー部のウェアに広告が出てもあまり得るものは無いと思います。でもありがたいことに、本当に気持ちというところで支援していただいたんです。ただ一つだけ、何か一緒に社会貢献活動をしようという意向だった。僕らも貰うだけじゃという思いもあったので、清掃活動はどうかという相談でやらせていただきました」

 指揮官が名を挙げた株式会社ジムマネジメントは新宿に本社を置くIT/情報サービス企業で、昨季ラグビー協会が史上初めて認可した大学チームのウェアなどへの広告掲出でも、同大が支援を受けた。今回のゴミ拾い活動にはSO伊藤和樹主将、FBタヴァケ・オトら新4年生ほぼ全員が参加。朝から3時間近くに渡り路上に捨てられたペットボトルや煙草の吸殻などを拾いながら日本有数の歓楽街を回った。次回の活動は決まってないが、酒井監督は「昨年度1回限りで新年度は今後の相談ですが、年1回はやりましょうという気持ちです」と今後も定期的に継続していくことには前向きだという。

 酒井監督は現在52歳。学生当時は大型CTBとして豪快なランでインパクトを残し、副将だった4年生のシーズンにはリーグ戦、大学選手権の2冠を果たした。大東大からリコー(現リコーブラックラムズ東京)へ進み、7人制日本代表、日本A代表にも選ばれた。引退後には俳優・タレント活動に打ち込むなど異色の活動を続けながら、2013-16年の中央大ヘッドコーチ時代は全4シーズンとも大学選手権進出を果たした。2019年には岐阜・郡上市で開催された女子7人制の国際イベント「郡上グローバル ラグビー女子セブンズ大会」の開催・運営に尽力し、JICAからの派遣で女子7人制マダガスカル代表コーチを務めるなど活動は多岐に渡り、23年に大東大監督に就任すると2シーズン目でリーグ戦優勝を果たした。

 7シーズンぶりの優勝という結果は、チームウェアへの広告掲載で支援してくれた企業の期待に応えることに繋がったが、歌舞伎町でゴミ拾いに打ち込んだ指揮官は、今季から導入される大学ラグビーでは史上初の“規約”についても動き始めている。

 厳しいアマチュアリズムを踏襲し続けてきた日本のラグビー界では、1995年の世界的なプロ化容認以降も大学チームのジャージー、用具等への広告掲載、スポンサー契約は認められなかった。だが、日本協会は昨季から練習ウェア等へのスポンサー名、ロゴの掲載を容認。今季からは試合用ジャージーへの広告も認可する規約変更を決め、既に4月1日から適用されている。岩渕健輔専務理事は「全国の大学チームの現状を鑑みて行ったもので、やはり様々な事から活動そのものが非常に難しくなっているという実態があることは周知の通りです。そのために、今までなんらかの形で制限がかかっていたことが解放されることで活動が前向きに進むのであれば、そう進める必要があるだろうと議論してきた。理事会ではもっと早く動くべきだったという意見もあった」と歴史的な変更の理由を説明したが、背景にあるのは大学チームの切実な台所事情だ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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