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99歳までボクシング界を支えた帝拳・長野ハルさん死去 64歳下の記者にも刺さる厳しさ、愛、畏敬の念

帝拳ジムで世界王者になった村田諒太氏「感謝と重圧の人」

 2018年4月、当時世界王者だった比嘉大吾が体重超過を犯した。混乱でごった返す計量会場。対応に追われる比嘉の所属ジムの女性マネージャーが筆者の前で右往左往していた。ゆっくりと歩み寄ったのが長野さん。両手で肩を抱き寄せ、そっとつぶやいたのが聞こえた。

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「長いことやっていれば、いろんなことがあるからね」

 戦後からボクシング界の隆盛のど真ん中を生きてこられた。これ以上ない説得力。相手は目を閉じ、力をもらっていた。

 ボクシング経験はないが「もうちょっとこうやって打つのよ」と言いながら、選手にパンチを見せる。年齢を聞いた海外選手や陣営が、そろって仰天するのは恒例だった。ジムにいれば空気が変わる。帝拳でミドル級の世界王者になった村田諒太氏は、2023年3月の引退会見で恩人である本田明彦会長と長野さんのことを「感謝と重圧の人」と表現した。

 厳しさはボクシング愛が深いゆえ。チケットの手配、興行パンフレットのチェック、取材の管理、ジムの電話対応。近年もマネージャー業を続ける背中には深い、深い畏敬の念しかない。

 多大な功績ほどは、あまり世間に知られていない名前。自身に関する取材や表彰は断り続けたと聞く。葬儀は近親者のみの家族葬。弔問、香典、供花も辞退された。全て故人の遺志。最期まで裏方に徹されたのだろう。

 厳しさと愛に記者としても育てていただいた。心よりお悔やみ申し上げます。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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