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ラグビー日本戦前日MTGに現れた1人の男 原辰徳、ペップを訪ねたエディーHCも唸った「勝利へのマインドセット」

ラグビー日本代表は9月15日のパシフィックネーションズカップ(PNC)準決勝でサモア代表を49-27で下してテストマッチ3連勝。21日に大阪・花園でフィジー代表との決勝戦に挑む。今年1月に復帰したエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が大幅な若返りを断行する中で、サモア戦は平均年齢24歳台という布陣で、世界ランキングで上位(15日時点)の相手を乗り越えた。チームが掲げる「超速ラグビー」に進化を見せた一方で、試合前日にはパリ・パラリンピックで金メダルに輝いた車椅子ラグビーの池透暢主将がチームミーティングに参加。“ラグビー”という名称では日本代表最高位を遂げたリーダーが、種目の違いを乗り越えて若き桜の戦士たちに伝えた勝利へのマインドセットを考える。(取材・文=吉田 宏)

PNC準決勝でサモアを破った日本代表【写真:(C)JRFU】
PNC準決勝でサモアを破った日本代表【写真:(C)JRFU】

テストマッチ3連勝でパシフィックネーションズカップ決勝に進出した日本代表

 ラグビー日本代表は9月15日のパシフィックネーションズカップ(PNC)準決勝でサモア代表を49-27で下してテストマッチ3連勝。21日に大阪・花園でフィジー代表との決勝戦に挑む。今年1月に復帰したエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が大幅な若返りを断行する中で、サモア戦は平均年齢24歳台という布陣で、世界ランキングで上位(15日時点)の相手を乗り越えた。チームが掲げる「超速ラグビー」に進化を見せた一方で、試合前日にはパリ・パラリンピックで金メダルに輝いた車椅子ラグビーの池透暢主将がチームミーティングに参加。“ラグビー”という名称では日本代表最高位を遂げたリーダーが、種目の違いを乗り越えて若き桜の戦士たちに伝えた勝利へのマインドセットを考える。(取材・文=吉田 宏)

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 サモア戦最多得点での快勝に、エディーの口調も弾んだ。

「まず、我々としてはステップアップになるようなゲームでした。これまで対戦してきた相手以上のチームであるサモアに対して、序盤戦をとてもいい形でスタート出来た。次のフィジーはとても質の高い相手です。いい準備をして臨みたい」

 現実を見据えれば、先発メンバーの平均キャップ数8.8という経験値の浅いサモア相手に、同じく12.2キャップの若い日本が快勝したというゲームだった。秋のヨーロッパ遠征も断念せざるを得ないほど財政難に苦しむ対戦相手の現状を考えれば、この日のスコアは差し引いて考えるべきだろう。だが、ゲームのクオリティーが1歩1歩積み上がるのも事実だ。

 エディーが「昨秋のワールドカップ(W杯)からテストラグビーで10番が出来るのは1人だけと考えていた」と実力を認めるSO松田力也(トヨタヴェルブリッツ)、SO兼FBとして期待の山沢拓也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)が揃ってコンディションを理由に代表合宿を離脱する中で、58キャップと経験豊富な立川理道(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)をSOに配して、SO兼FBとしての可能性を模索する李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)を先発では初めてFBで投入。状況に応じてSOに入りながら、猛烈に前へとプレッシャーをかけてくるサモア防御の裏を突くグラバーキックで前半6分の先制、16分、後半4分のトライをアシストし、10分のペナルティートライ、後半39分のトライも好判断の飛ばしパスから引き出した。前半39分には自らライン参加してトライをマークするなど、6トライすべてに関わり、ゲームをコントロールするプレーを印象づけた。

 李だけではなく、アタックを仕掛ける選手が常にアングルチェンジや、コンタクトする瞬間にタックラーの芯をずらすようなステップ、ボディーコントロールを駆使してボールを継続。サモアの強みでもあるフィジカルの衝撃を半減させることで、従来の試合以上に日本が求める速いリズムでの連続攻撃を見せ始めた。

 第2次エディージャパンの始動となった6月のイングランド戦でも10番を託された李だったが、エディーが打ち出した「超速」を意識するあまり無理矢理速いアタックをし続けて、ゲームコントロールが十分には出来なかった。だが、サモア戦では、戦況を見渡せる最後尾からBKに指示の声を送り、ライン参加からキック、ラン、パスを使い分けボールを動かした。

「自分たちが掲げる超速ラグビーのところで、サモアの(強い)フィジカルに対してどんどんスピードを持ってボールを動かし続けることにフォーカスして戦いました。9番、10番へのコミュニケーションもですし、自分を起点に積極的にボールを動かすことにもフォーカスして挑みました。初めて15番で先発しましたが、ラグビープレーヤーとして成長出来るいい経験でした」

 そう、自信を持って勝利を振り返った李に対して、エディーも冗談を交えながら及第点を与えている。

「お酒が大好きな選手なので、100本のビールが贈られるマン・オブ・ザ・マッチは他の選手にしてほしかったけれど、いい形でゲームに順応していた。アタックラインにも、いい形で仕掛けながらプレーしていた」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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