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年間授業料1400万円、錦織圭ら輩出したIMGアカデミーは高いのか 米国名門スクールの相場と実情

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「IMGアカデミーの学費から見る米国のボーディングスクール」について。

今回は「IMGアカデミーの学費から見る米国のボーディングスクール」について【写真:Getty Images】
今回は「IMGアカデミーの学費から見る米国のボーディングスクール」について【写真:Getty Images】

連載「Sports From USA」―今回は「IMGアカデミーの学費から見る米国のボーディングスクール」

「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「IMGアカデミーの学費から見る米国のボーディングスクール」について。

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 米フロリダ州ブラデントンにあるIMGアカデミーは、男子テニスの錦織圭を輩出した学校として知られる。錦織は、盛田正明テニスファンドの強化選手に選ばれて、2003年にIMGアカデミーに留学した。

 今年の夏、つまり2024年度からIMGアカデミーの高校生として、テニスをするときには、年間で9万3900ドル(約1412万円)かかる。自宅から通う場合は7万3400ドル(約1104万円)である。2022年のアメリカの世帯の収入中央値は7万4580ドル(約1123万円)で、一般的な家庭がおいそれと出せる金額ではない。しかも、夏休み期間は寮から離れるので、実質10か月のコストである。

 IMGアカデミーから奨学金を受けられることもある。しかし、筆者が2023年に提供数や金額を問い合わせたところ、具体的な数字は明かされず、IMGアカデミーの生徒が利用できる学資の援助には限りがあり、学業、スポーツ、家庭の財政などの審査によって選ばれるという回答だった。学資援助を受けられる生徒はわずかであり、自費か、もしくは盛田ファンドのような外部からの援助を受けていると考えられる。

 IMGアカデミーはプロアスリートも利用する充実した施設を持つ。東京ドーム約50個分に相当する600エーカーの敷地に、サーフェスの異なる50面以上のテニスコート、5000人を収容できるスタンド付きグラウンド、18ホールのゴルフ場、体育館2つ、ウエイトルーム2つなどである。各種目の複数のコーチに加え、メンタル専門のコーチ、栄養士、ヨガのインストラクターなどから指導を受けることができる。IMGアカデミーは中高生アスリートがトレーニングをするだけの場所ではなく、中学生や高校生として授業を受ける学校でもある。学業面でも取りこぼしがないように、授業を受けるだけでなく、必要であれば1対1で指導する。施設に加え、運動も学業もひとりひとりの生徒のニーズにあわせた指導を提供できるから、年間9万ドル(約1353万円)という学費は妥当なのかもしれない。

 それだけではIMGアカデミーの学費が高いのかどうかはわからないので、比較のために、他の名門ボーディングスクールと呼ばれる学校の年間の学費を見てみよう。ボーディングスクールとは寮制の学校のことである。IMGアカデミーはスポーツをしながら高校卒業資格を得られる学校で、寮を持ち、生徒を24時間体制で見守ることから「ボーディングスクール」というカテゴリーに分類できる。最近では、英国のボーディングスクールが日本で開校しているから、この言葉を聞いた人も少なくないのではないか。「ハロウ」の系列校が2022年8月に、23年9月に「ラグビースクール」の系列校が千葉県柏市で開校した。

 アメリカのボーディングスクールのトップ校はアイビーリーグ進学者を多く輩出するため、アイビーフィーダーと呼ばれている。ベスト10のうちでも上位にランクされているフィリップス・エクスター・アカデミーで授業料は年間の学費は6万7315ドル(約1013万円)、また、チョート・ローズ・マリー校で6万9370ドル(約1044万円)である。また、カリフォルニア州にあるウッドサイドプライオリー校は米国内では最も学費の高いボーディングスクールとされており、年間の学費は8万5260ドル(約1283万円)。メンタルヘルスの治療をするという特色を持つショートリッジアカデミーの年間学費は12万5000ドル(約1882万円)といわれている。アメリカトップのボーディングスクールの学費が7万ドル(約1054万円)前後で、8万5000ドル(約1279万円)越えのところもある。これを考えると、IMGアカデミーは割高であるが、けた外れに高いわけではないといえるだろう。

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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