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30年余りで花園予選1490→549校に激減 高校ラグビーへの提言、“高松北の悲劇”に今も残る忸怩たる思い

ポイントはいかに中学生年代を高校ラグビー部に繋げていくか

「日本ラグビーの強化のピラミッドを考えると、いま日本代表がこの位置にいられるのは、ここまで高校の選手が非常に多かったこと、それから大学へ上がってもプレー出来る環境があることがベースだと思っています。我々がまずやらないといけないことは、従来以上に高校世代に手をかけていくことです」

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 同専務理事は、中学世代、特に中学校の部活ではなくラグビースクールの選手数が増加していることをポジティブな要素と捉え、この世代をいかに高校のラグビー部へと繋がれて行くかを1つのポイントと考えている。そのために日本協会が出来る事業についても言及している。

「中3から高1にラグビーを続ける人、減少する人の割合を調べています。要は中3まで選手がいるんですけれど、高校でラグビー部に入らないという人が多い。都道府県協会とも連携して、なんとかいろいろな形でラグビーをプレーできる環境を整えていく。具体的には、もちろん特定の都道府県で特定のプログラムを行い、プロジェクト的に進めながらやっていくことです。それは例えばですけれど、代表戦の試合会場の公募をやらせていただきましたが、そういうものを使っていろいろな都道府県で試合を行い、その地域を巻き込みながら普及活動を一緒になって行うような活動を、必ず積極的にやっていきます。普及については今まで以上に来年度は、予算もそうですし組織としてもより主体的に取り組んでいくことにしています」

 積極的な姿勢をみせる同専務理事だが、日本協会自体の変化が、各地域の高校、ジュニア世代の普及にも大きく影響するという。

「いままでは日本協会はお金もない、なかなか人もいないという時代が続いてきたが、今はスタッフの数も増えたり、収支規模も大きくなっています。今は幸い代表戦を行い、選手たち頑張ってくれて、前向きな観客動員になっています。それを選手たちを生み出してくれたエリアとかに、どう還元していくかが大きなポイントになる。日本協会が来年度に例えば80億円、90億円の予算になったとすると、それをどうやって高校レベル、中学レベル、あるいは都道府県レベルで生かしていけるのか。それを何とか来年から進めていかないといけない」

 長きに渡り、日本協会は高校世代の事業の多くを高体連に委ねてきた。それは、予算面も含めてだったが、日本協会が2019年ワールドカップの開催を決め、同時に代表チームの強化をシフトアップしたことで、協会の収益性にも大きな変化をもたらした。この収益を、危機的な状況に陥る高校、ジュニア世代にも積極的に生かそうというのが、岩渕専務理事の構想だ。

 来年度から、高校世代に対する新たな事業に期待をしたい一方で、この世代への取り組みには溝もある。どの競技も同様だが、高校スポーツは、競技団体(協会)以上に高体連が主導的な立場で運営してきた歴史がある。他国以上にスポーツを「教育」という範疇で考え、発展・強化してきたのが日本特有の土壌だ。協会と高体連が協調して、「花園」のような大舞台を100年を超える歴史の中で支えてきたのは間違いない。その一方で、協会、高体連双方に溝があるのも現実だ。

 協会が競技ベースで様々な事業を進めたいのに対して、高体連が教育という観点を無視できない姿勢を貫いてきた。ラグビーも高校生を対象とした事業は伝統的には高体連主導で進められてきたが、現状の参加校数や競技人口、それに加えて、教員でもある監督が、授業やクラス運営、そして学校行事などの職務で多忙を極める中で、部の強化、そして競技人口の確保や拡大という領域まで手を広げることは至難の業というのが実情だ。そのために、部活の外部委託化のような事業も地域によっては着手されている。

 このような状況の中で、日本協会が高校生の部員不足、出場校減少に効果的に協力出来る事は何なのだろうか。簡単に考えれば金か人手となるが、ここは日本各地やチーム毎に違いがある。各地、各校で実際に何が必要かを吸い上げ、効果的な支援を考えていく必要があるだろう。岩渕専務理事は「来年度から」と強い意志を示したが、現場のニーズを中枢の協会が把握し、反映した支援を実施するにためには時間はかかりそうだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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