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札幌ドームを「負の遺産にしない」 ネガティブ報道に心痛、コンサドーレが示す二人三脚の姿勢

札幌ドームは「ホヴァリングサッカーステージ」を採用。サッカーの試合がない日は天然芝のピッチをドーム外に移動させるため冬の間は除雪作業が欠かせない【写真:宇都宮徹壱】
札幌ドームは「ホヴァリングサッカーステージ」を採用。サッカーの試合がない日は天然芝のピッチをドーム外に移動させるため冬の間は除雪作業が欠かせない【写真:宇都宮徹壱】

ドームだったらシーズン移行を無条件で受け入れられるのか?

 1993年にJリーグが開幕した時、本州以外を本拠とするクラブはなかった。北海道にJクラブが誕生したのは、それから5年後の1998年。川崎市で活動していた東芝サッカー部が、開拓団さながらに移転して「コンサドーレ札幌」として誕生している。

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 現代の視点で見れば、Jリーグのみならず、NPB(北海道日本ハムファイターズ)やBリーグ(レバンガ北海道)など、北海道にプロスポーツがあるのは「当たり前」となっている。しかし、コンサドーレがこの地に設立されるまで、北海道はプロスポーツ不毛の地であった。その一番の原因は、北の大地ゆえの寒さと雪である。

 昨今、話題となっているJリーグのシーズン移行問題については、札幌の社長だった野々村がチェアマン就任後に議論が具体化していることから「札幌はドームがあるから問題ないと思っているのではないか?」というやっかみにも似た声をよく耳にする。とはいえ、そんなに単純な話でもあるまい。三上は言う。

「確かに試合開催に限っていれば、他の雪国のクラブに比べて快適なのかもしれません。でも試合以外の日、サッカーのピッチはドームの外に出ていますから、冬の間は雪が1メートルから2メートルくらい積もります。雪かきの必要はあるし、芝の負担にもなりますからね。それにトレーニングも、冬の間は屋内練習場の人工芝で行うことになるでしょう」

 北海道でプロスポーツ興行を成立させるには、ドーム型の競技施設は不可欠だった。札幌ドームの場合、屋外で育成した天然芝を空気圧で浮かせて屋内へ移動させる「ホヴァリングサッカーステージ」を採用しており、サッカー用の天然芝と野球用の人工芝を使い分けられるようになっている。ただし、天然芝のピッチをドーム内にしまっておくわけにはいかないため、やはり積雪のコストは考えなければならない。

 そうした状況がありながらも、夏場の選手の消耗を考えるならば、シーズン移行について三上は理解を示している。当人曰く「条件付き賛成」。その条件は2つあるという。

「1つは冬の間でも、トレーニングができる環境整備。JFAとJリーグと当該クラブ、そしてホームタウンの自治体の4者がしっかり財源を確保することが大事だと思います。もう1つは、雪国でも冬の間もスポーツを楽しむための環境整備。これはプレーヤーだけでなく、観戦する人についても同様です。シーズン移行については、その意義や必要性を感じていますが、以上2つの条件が満たされれば、という意味での『条件付き賛成』というのが、今の僕の立場です」

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宇都宮 徹壱

1966年生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」を追う取材活動を展開する。W杯取材は98年フランス大会から継続中。2009年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞した『フットボールの犬 欧羅巴1999-2009』(東邦出版)のほか、『サッカーおくのほそ道 Jリーグを目指すクラブ 目指さないクラブ』(カンゼン)、『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)など著書多数。17年から『宇都宮徹壱WM(ウェブマガジン)』を配信している。

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