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「ラグビーをさせたくない空気」に強豪校も危機感 中学年代で競技人口が減る要因とは

強豪校もスカウトしなければ「翌年の新入部員はゼロ」

 智翠館のように県外から部員を供給できる環境があっても、地域の競技人口の低下は深刻だという。日本ラグビー協会関係者に普及について聞くと、日本代表が南アフリカからの金星を挙げた2015年ワールドカップ、日本中で注目を浴びた19年大会を契機に、ラグビースクール入学希望者が増大するなど若年層での競技人口が増えているとポジティブな面を強調する声もある。

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 だが、中学生年代では部活、学外でのスクールなど競技の受け皿が不十分だ。そのため、小学生レベルで右肩上がりの競技人口が、中学入学時点で一度落ち込み、そこから高校、大学と競技人口が増えていく傾向が続いている。この中学での落ち込みをなんとか食い止めたいと、多くの高校指導者も頭を悩ませている。今回の取材でも強豪校も、それ以外の高校の指導者も、揃って問題視していたのが印象的だ。

 石見智翠館同様に、県予選出場校が少ないなかで、チームを全国レベルの強豪に鍛えてきたのが佐賀工だ。41シーズン連続での花園出場を果たした今季の県予選出場は3校。1回戦→決勝の合計2試合という、最近少なくないパターンの予選が続いているが、花園では優勝した東福岡に準決勝で18-24と喰らいついた。全国屈指の強豪を率いる枝吉巨樹(なおき)監督だが、県内での普及や競技人口の拡大、そして佐賀工の選手獲得は難しいという。

「佐賀でも、小学生では200くらいのチームがあるんです。でも中学だと1つ、2つしかない。他の競技に行ってしまうのは、なかなか止められないですね。うちには選手が集まってきてくれるだろうと思われている方もいますが、佐賀の実情は難しい。正直な話、佐賀工でラグビーをやりたいと来てくれる子は少ないです。だから自分たちで1つ1つ足を運んで、県内のラグビーをやっている子、やっていない子に地道に声をかけています。それでも断られるのが8割です。チームの強化を続けながら、その合間を縫って選手を獲得していかないといけない。もし1年間(中学生の)スカウトをしなければ、翌年の新入部員はゼロというのが実情だと思います」

 現在、早稲田大学を率いる大田尾竜彦監督、元日本代表の五郎丸歩さんら多くの名選手を輩出する佐賀工を、全国区の強豪に鍛え上げた小城博前監督(現・総監督)の時代から、競技人口が少なく、隣接する福岡、大分、長崎に有望選手が集まる環境のなかで、ラグビー経験者、未経験者を問わず多くの逸材を集めてきた。監督時代、将来性のある生徒を探すために県内の中学校の運動会を塀越しに覗いていて職務質問されたという逸話は、今や高校ラグビー界の都市伝説だが、それほどの情熱を持って可能性のある中学生を発掘し、勧誘して、鍛えてきたのが佐賀工の伝統だ。

「今だったらストーカーかと思われてしまう」と苦笑する枝吉監督だが、今大会でメンバー入りした3人の身長190センチ台の選手も、中学時代はサッカー、バスケットボール、バレーボールとラグビー兼務という素材を勧誘し、育ててきた。地道に有望な素材を探し、育てる佐賀工の伝統を継承する一方で、2021年からは佐賀工OBを中心に同校グラウンドを利用して、中学生を対象としたアカデミーも開設するなど普及にも力を注いでいる。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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