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一度は諦めた宇宙空間への想い パラリンピアン富田宇宙が体現する「レジリエンス」

富田はパラ競泳を始めた時、あることに衝撃を受けた【写真:窪田亮】
富田はパラ競泳を始めた時、あることに衝撃を受けた【写真:窪田亮】

水中で見つけたバリアフリーの世界、無重力の世界では…

 3歳から続けた水泳は高校卒業と同時に一区切りをつけ、大学では健常者として競技ダンスに打ち込んだ。再び水の中に戻ったのは社会人になってから。視覚障がいが進行したこともあり、障がい者として参加するスポーツを探していた時、友人からパラ競泳を紹介された。この競技との出会いが、富田の人生を大きく変えることになる。

「パラ競泳を始めた時に衝撃を受けたのは、水の中ってすごくバリアフリーの世界なんだということ。普段だったら車いすを使う人、義足をつける人、義手をつける人、白杖を持つ人、何かしらバリアを感じている人がみんな、一切をプールサイドに置いて一緒に楽しめるのが水泳。本当に水の中ってバリアがないなって思ったんです」

 かつては気付かなかった水泳の魅力に気付き、競技にのめり込んだ。何かに打ち込むとトコトン極めるタイプ。メキメキと実力をつけ、視覚障がいの最も重いクラスで世界トップを争うまでになった。そんなある日、ふと思った。

「実は無重力の世界って、水の中よりもバリアフリーなんじゃないか。無重力では浮いていればいいんだから、歩けない人でも歩く必要はない。もちろん、医療的課題であったり、宇宙に到達するまでの負荷の問題であったり、健康面でクリアしなければいけないことは色々あるでしょう。でも、この地球上で差別だの何だのと言っている一方、宇宙には多様な世界が広がっている。

 2020年11月から半年、国際宇宙ステーション(ISS)で活動した野口聡一さんのチームはダイバーシティ(多様性)が一つのテーマになっていて、様々な国籍、性別、立場のクルーで構成されました。そして、その宇宙船は困難に打ち勝つことを意味する『レジリエンス』と命名され、さらには『多様性からレジリエンスが生まれる』というメッセージはパラスポーツの在り方とピッタリ重なる。それに気が付いた時、宇宙は実は障がい者にこそ拓かれるべき世界なのかもしれない、と考えたんです」

 もちろん、ISSに長期間滞在し、実験や船外活動など様々なミッションを実施する宇宙飛行士になるには、クリアしなければならない身体的条件がある。だが、2021年にはブルーオリジンやスペースXなど民間の宇宙船が旅行者を乗せ、宇宙空間を航行。「宇宙旅行元年」とも呼ばれ、旅行先としての宇宙がグンと現実味を増した。短期の滞在であれば、近い将来、誰もが宇宙空間に行ける日が訪れることも夢物語ではない。

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