「笑顔があふれ、震災に負けない街に…」 大船渡の子供と伊藤華英さんの7年目の歩み
伊藤さんが子供たちに送ったメッセージ「みんな、他の人にはなれません」
再び会議室に戻り、行われたのは今回のメインイベントとなる「夢宣言」。参加する子供たちが「将来の夢」「未来の自分の街をどうしたいか」「半年後の約束」をノートに書き込み、発表していく。
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子供たちが頭を悩ませながらも思いを込めた宣言を、伊藤さんも見守った。
「将来の夢」には「水泳を続けてプロになること」「プロ野球選手になりたい」「海上保安庁に勤めたい」などの声が上がり、「半年後の約束」では「0.1秒でもいいからタイムを縮めたい」「教えてもらったことを忘れず泳ぎたい」など、それぞれが成長を誓った。
参加した子供の多くは震災後に生まれた世代。しかし、「未来の自分の街をどうしたいか」では「水産業が盛んで安心して住める街にしたい」「笑顔があふれて、震災にも負けない街にしたい」など、生まれ故郷への愛情が伝わる子供たちの言葉が印象的だった。
締めくくりはトークコーナー。子供たちが次々と挙手して質問し、それに伊藤さんが答えていく。「好きな食べ物は何ですか?」という子供らしいものから「どうしたら、そんなに速く泳げるんですか?」という水泳にまつわる質問まで。
現役時代は1回の練習で13キロ泳いだという話には子供たちも目を丸くした。2度出場した五輪について振り返った伊藤さんは「五輪に出られたことも嬉しかったけど、そこまで一緒に頑張った仲間がいて、一緒に過ごした時間が凄く大切になった。だから、みんなも学校の友達や仲間を大切にしてね」と呼びかけた。
そして、最後に行われた閉会式。伊藤さんは「最初からみんな凄く泳ぎが上手でした」と1日を振り返り、メッセージを送った。
「これから何が大切かということ、自分の目標に向かって頑張っていくこと。みんな、他の人にはなれません。人と比べず、自分のベストを尽くすこと。その中でいろんな人が助けてくれるので、感謝の気持ちを持つこと。タイムを達成することも大切だけど、達成するために何を考えてどう頑張るかも大切。結果はコントロールできないけど、自分の頑張りはコントロールできる。まずは今、目の前のことを一生懸命に頑張ってみてほしいです」
感謝や努力、目標設定。水泳から学べる人生において大切なこと。それを教えてくれる言葉に、子供たちも真剣な表情で聞き入った。
伊藤さんにとって、7年目の取り組み。「大船渡でみんなと会えるのが楽しいし、だんだんと街も変わっていきます。このサポートを通じて、大船渡をもっともっと知っていきたいです」と言って、再会を誓った。
大船渡の子供たちと伊藤さんの、また新たな半年間が始まった。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)