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肌色の違いを感じた少女時代 大竹風美子に自信を与えた、ラグビーの“多様性”が持つ力

怪我で東京五輪出場を逃した後は「灰みたいになった」

 足立第十四中学校、東京高校と、自らが育った地でもある東京での五輪は、大竹にとっては絶好の輝ける舞台だったが、開幕が近づく2021年2月に左膝を負傷。残念ながら本大会に間に合わなかったが、この挫折も自身の意識改革で乗り越えた。

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「もちろん、(今の)大きな目標はパリです。でも東京の時は、東京、東京とずっと考えてやってきて、代表ヘッドコーチが半年前に代わったり、自分の怪我も起きた。本当に何が起こるか分からないというのを痛感して、考え方が少し変わりました。オリンピックのことばかり考えすぎた分、怪我でセレクションのフィールドにも立てないという反動が大きすぎて、本当に落ち込んでしまった。灰みたいになったんです。何を思って、これから生きていけばいいのかと。でも、そこから学んだことは、もちろんパリのオリンピックも見据えるけれど、目の前の試合、大会をしっかり見て、自分の目標を1個1個クリアしていこうと考えるようになったんです。何が起きてもおかしくないから、しっかり準備することがすごく大事だなと思うようになりました」

 こんなマインドで大竹が挑み、乗り越えてきたのが、チャレンジャー大会でありW杯。そして今、目先のターゲットに据えるのが、自身もコアチーム入りに貢献したワールドラグビー・セブンズシリーズだ。

「オリンピックの前にセブンズシリーズがある。ここでしっかりチームとして結果を残して、その先にオリンピックなんで。今日のイベントに一緒に参加した楢崎明智くん(スポーツクライミング)とも話したんですけど、メディアや友人、周囲はオリンピック、オリンピックと期待してくれる。もちろん、ありがたいことですけど、私たちアスリートにはオリンピックもワールドカップもセブンズシリーズも、どの大会も全部やることは変わらない。気持ちも変わらないので、1つひとつ戦っていくことが大事だよねと話をしました」

 足元を見つめて挑むパリへの挑戦が、12月のセブンズシリーズから新たなステージを迎えることになる。

 その一方で女子ラグビーは、大竹が挑んだ7人制W杯を終えて、10月8日からは15人制W杯がニュージーランドで開幕した。世界ランキング3位のカナダとの初戦は5-41、同6位のアメリカに17-30と敗れた“サクラフィフティーン”(15人制女子日本代表/同13位)だが、今年はオーストラリア(同7位)、アイルランド(同9位)を撃破するなど急速な進化を続け、その戦いぶりが注目される。7人制、15人制と女子ラグビーは百花繚乱の1年だ。

「でも、私自身は『頑張ってるな』みたいなことはあまり感じないです。当たり前のことを当たり前にしているだけで、自分たちがよくやったという意識はないですね。でも、8月27日には女子日本代表のキャップ授与式があった。目に見える形で表彰してもらえることで、女子ラグビーの価値が少しずつ上がっているのかなとは思いますね」

 キャップとは、代表の公式戦「テストマッチ」に出場した選手に授与される称号で、実際に帽子が授与される。このキャップの、歴代代表選手への授与式が、秩父宮ラグビー場で行われた日本対アイルランドのハーフタイムに行われたのだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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