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日本ラグビーは「独特な世界」 社員選手かプロ転向か、揺れる若手選手のキャリア選択

「みんな勘違いしている」と代理人が危惧すること

 関係者の話を聞くなかで思い浮かんだのは、10数年前にある強豪社会人チームのマネジメント担当者が語っていた選手への思いだ。

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 当時、すでに日本のトップ選手はプロ契約をしていたが、このチームは勧誘している大学の有望選手に対して、原則は社員として採用したいと声をかけていた。「高校、大学とラグビー漬けで、社会のことも分からない学生が、いきなりプロではその選手が生きていく上でもプラスにならない。プロになるのは、社員として社会の仕組みを理解して、人間関係を築くことの大切さを学んでからで十分。能力面でも、チーム、そして代表で活躍するレベルの実力をつけてからじゃないと、プロで生きていくのは難しい」という話を聞いた。このチームが、何人かのプロ希望選手の獲得を断念したのも事実だが、社員選手として力をつけて代表入りを果たして、その後プロ契約に切り替えて現在も日本代表で活躍する選手も在籍している。

 一般的に企業側から見れば、選手のプロ契約は比較的容易なことだ。どの会社でも経営に大きく影響する人件費を考えると、企業が1人の社員(選手)に支払う生涯賃金と、プロとして契約期間だけ払う報酬を比べれば後者が断然コストは安い。前述のマネジメント担当者も、人件費のことを考えればプロ契約をしたほうが会社にとって利益になることを踏まえながら、敢えて選手の将来のことを思い、社員契約での獲得に力を注いできた。このような、企業の利益よりもラグビー界の将来を考えた人物、チーム側の陰ながらの努力や思いで支えられてきたのが日本の企業ラグビーの足跡でもある。

 小林は今、エージェントとして日本人選手たちと接していて感じる不安な将来のシナリオも思い描く。

「ある選手が社員としてチームに入り、成長していく。ようやく試合に出られるかなという段階で『プロになりたい』と言われて、交渉の末に違うチームへ行くというのはよくあることです。僕が所属したチームでも、エージェントとしても、そういう選手を実際目にしています。でも、例外はいますが、そんな成功例はほんの一部のエリート選手だけです。他のチームでプロになっても1回の契約だけで、わずか2、3年で契約が終わってしまうケースが多いと思います。その後はいろいろなチームを数年、1年ごとに転々として、その先に何があるのか。

 将来はコーチになると話す選手が多いけれど、今、日野(レッドドルフィンズ)で頑張っている箕内拓郎ヘッドコーチや、クボタ(スピアーズ船橋・東京ベイ)で評価されている田邉淳アシスタントコーチのようになれると思っているのでしょうか。彼らのような立場にいられるのは、一握りどころか“一つまみ”しかいないのに……。みんな勘違いしていると思います」

 小林が危惧するのは、プロ化したスポーツで常に課題となるセカンドキャリアの問題だ。引退後の選手が、そのままチームに残りコーチなどになれるチャンスは、ラグビー界でも年々狭まっている。多くのチームが外国人指導者を招き、そのスタッフも、以前から一緒に仕事をしてきた人材を集めているからだ。参考までに挙げておくと、昨季リーグワンの1部リーグ、ディビジョン1で外国人監督、ヘッドコーチは12チーム中10人。ディビジョン2は6チーム中1人だったが、この1人が率いた三菱重工相模原ダイナボアーズがディビジョン1に昇格している。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19年と6大会連続で取材。

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