[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

“体格至上主義”は愚の骨頂 英雄クライフも重視した、小柄なサッカー選手に備わる利点

体格差が生む影響力はトップレベルでは限定的

 GK、CB、ボランチはどうしても、大型化の傾向にはある。それは否定できない。戦いでは原則的に、弱点を作ってはならないからだ。

【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

 しかし、SBやサイドアタッカー、インサイドハーフなど「体格」と無関係なポジションもある。

「小さい選手を疎んじるなど、もってのほかである。ユース年代で、小さい体で目立っているということは、大きな体の選手に負けない閃きや技術があるわけで、それはすでに才能と言える。小さい選手にこそ、着目すべきだ」

 バルサの中興の祖とも言えるヨハン・クライフは、むしろ小さいことの利点を説いている。その説得力は眩しいほどだ。

 サッカーは、集団の中で個人がサッカーボールを扱う競技である。多勢の中で個人が技術を競い、その局面で優勢になることによって、全体でも優勢となる。体格差で有利になることもあるが、ボールを扱い、操り、コンビネーションを生むほうが、強力な力を生むのだ。

 1人の高さ、強さ、速さは低レベルの戦いでは大きくモノを言う。しかし、トッププロでの効用は実は限定的である。もし体力が絶対的なら、ウサイン・ボルトはサッカー選手としても引く手あまただったはずだし、長身選手であふれ返っていただろうし、あるいはプロレスラーのような体型の選手が闊歩していただろう。

 ボールプレーを極めることに、サッカーの本質はある。そこは育成段階で決して外してはならない。ボール技術のない選手など、プロでは置き去りにされる。

 真のトッププレーヤーは、プレッシングなどストレスに感じない。

「自分に選手がそれだけ集まってくれば、周りの味方はそれだけ有利になっているでしょ?」

 全盛期のアンドレス・イニエスタの発言である。周りを6、7人に囲まれた彼は、まるで相手を罠にかけたようにし、フリーになった味方に決定的パスを出した。フィジカルの劣勢など一瞬で無力化。彼と調和した選手たちが、世界の王座に君臨した。

 その技術や発想、判断を磨くことが、本来はサッカーの面白さと言える。

1 2 3

小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
UNIVAS
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集