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“体格至上主義”は愚の骨頂 英雄クライフも重視した、小柄なサッカー選手に備わる利点

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は選手の「体格」について、現代サッカーの父と言われるヨハン・クライフの言葉を引用しながら、小柄だからこそ備わる才能や利点などについて説いている。

久保建英ら日本人選手をはじめ、輝きを放つアタッカーには体格より技術やスピードに優れるタイプが多い【写真:Getty Images】
久保建英ら日本人選手をはじめ、輝きを放つアタッカーには体格より技術やスピードに優れるタイプが多い【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:受け身のポジションで止まらない大型化

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は選手の「体格」について、現代サッカーの父と言われるヨハン・クライフの言葉を引用しながら、小柄だからこそ備わる才能や利点などについて説いている。

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 現代サッカーにおいて、選手の「体格」が単純に求められつつある。

 例えば、ヨーロッパのトップレベルで活躍するゴールキーパー(GK)の身長は190センチ前後が平均になっている。欧州王者レアル・マドリードのベルギー代表で世界最高の守護神との呼び声が高いティボー・クルトワは200センチ。むしろ、185センチ以下のGKを探すほうが難しいほどだ。

 相手を受け止める、受け身的なポジションでは、この傾向が強い。

 センターバック(CB)も平均で185センチ近くだろうか。大きな体躯に加えて、屈強さや素早さも求められる。レアル・マドリードのオーストリア代表ダビド・アラバや、FCバルセロナが新たに獲得したフランス代表ジュール・クンデは180センチ前後と小柄だが、特別な速さや判断の良さ、キック技術を併せ持ち、総合力で敵を凌駕できる。彼らは例外的で、サイドバック(SB)起用もある選手だ。

 その点、ボランチも似たようなものだろう。小柄な選手が中盤中央で君臨するケースは希少になっている。受け身にならざるを得ない局面があるポジションであることに変わらず、高さの弱点を狙われる。180センチ前後のMFが一般的で、191センチのマンチェスター・シティ、スペイン代表ロドリのように大型化が止まらない。

 攻撃面の選手も、フィジカル志向は強まりつつある。

 では、育成において「体格」を重んじるべきか?

 いきなり結論を出すようだが、サッカー全体での体格至上主義は愚の骨頂である。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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