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ワリエワはなぜ全ジャンプで両手を上げる? 「難しい」という先入観を壊した効果とは

「難しそう」だが、身に付けてしまえば回転速度を上げやすい

 2018-19シーズンからはこの「空中姿勢の変化」の要件が削除されたため、直接的な加点にはならない。しかしワリエワはこう言う。

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「子供の頃から手を上げて跳んできたので、今では手を上げないと跳べなくなってしまいました」

 もちろん手を上げることが全く加点されないわけではなく、「踏み切りから着氷までの身体の姿勢が非常に良い」という加点要素があるため、プラスされる可能性はある。また美しい姿勢が演技にプラスになっていれば、演技構成点にも反映される。

 しかし、それだけがワリエワが手を上げる理由ではない。実は手を上げることが、ワリエワのジャンプ、特にトリプルアクセルの秘訣になっているのだ。

 まず空中姿勢の「細さ」を考える。ジャンプの回転を起こすには、エッジできっかけとなる回転をつけたあと、広げている両手を縮めて半径を小さくすることで速度を上げる。いわゆる慣性の法則だ。つまり回転する体軸が細ければ細いほど、最高速度は上がる。

 日本人の多くの空中姿勢は、両手を胸のあたりで組み、肘はすこし外に張っている。つまり「肘から肘」が直径になる。ネイサン・チェン(米国)のように身体を抱きしめる姿勢だと、肘が出っ張らないぶん細くなり、「肩から肩」が直径になる。そしてワリエワのように両手をしっかりと上げていると、「脇の下から脇の下」が直径になる。つまり両手を上げた姿勢が、最も回転軸が細くなるのだ。

 つまり「両手を上げるのは難しそう」という先入観はあるが、身に付けてしまえば、回転速度を上げやすい跳び方ということになる。

 そしてこの「両手上げ」は、トリプルアクセルの回転にも有利に働いている。まず一般的なトリプルアクセルの跳び方は、(1)両手を後ろに引いて構え、(2)左足で跳び上がると同時に、両手と右足を前に振り出して高さを出し、(3)両手を胸元に締めながら、脚も締めて回転軸を作る――という3段階のプロセスで跳ぶ。他のジャンプに比べて、両手を前に振り出す動作がある分、回転し始めるのが遅れる。

 ところがワリエワは、(1)左手は前、右手は後ろに構え、(2)左足で跳び上がると同時に両手を真上に絞り上げて回転をかけて、(3)脚を締めて回転を速める――という跳び方をする。他の選手と違い、(2)の時点ですでに手で回転をかけているのだ。前に構えていた左手を頭上に持って行くことで、「手で高さを出しつつ、回転もさせる」という一石二鳥の役割をしていることになる。

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野口 美惠

元毎日新聞記者のスポーツライター。冬季五輪は2010年バンクーバー大会から現地取材。自身のフィギュアスケート経験をもとに技術面を丁寧に描写した記事に定評がある。スポーツ専門誌などに幅広く寄稿。著書に『伊藤みどり トリプルアクセルの先へ』(主婦の友社)、『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)など。

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