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ラグビー日本代表、苦戦に見えた光明 デビュー戦初トライの24歳中野将伍が示した可能性

感情を内に秘め男臭さを漂わせた早稲田大時代

 勝てたことだけが収穫のようなゲームの中で、新戦力のプレーには光明もあった。学生時代から将来性を期待されていた中野は、トライシーンも含めて、持ち味の日本選手にはないような力強いラインブレークを何度も見せた。中野本人はデビュー戦をこう振り返る。

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「今日は最初からアタック、ディフェンス共にアグレッシブにプレーしようと挑みました。ボールを持った時は必ずゲインしようとアグレッシブに行けたところは良かった。トライでチームを勢いづけたかった」

 相手防御を倒してのランは、この日好調だったSO松田力也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)の6回に次ぐ4回を記録するなど、攻撃面ではチームでも上位の数値を残した。所属チームではWTBでの起用が多かったが、ジョセフHCは試合前に「もともと彼はCTBだと考えている」とCTBで起用していくことを明言。現在不動のCTBコンビを形成する中村と負傷離脱中のラファエレ・ティモシー(コベルコ神戸スティーラーズ)の次を狙う存在としてポジション争いに本格参戦する。

「サイズもあるし、ステップ、パスもできる。すごい選手がいる。兄以上の可能性を持っている」

 こんな話を聞いたのは、中野が福岡・東筑高2年だったろうか。話をしたのは某伝統校のOB。福岡県の高校ラグビーは、花園で常に優勝候補に挙げられる東福岡高が君臨し、筑紫高や福岡高らが王者に挑む構図が続いていた。東筑高も過去に花園出場3回を誇るが、全国区の知名度はない。県下の有望選手も東福岡高、筑紫高などに集まっていたが、中野だけは破格の選手として高校ラグビーに留まらず、獲得を目指す大学ラグビー界でもその名を知られていた。某伝統校も入部を熱心に誘い続けていたが、本人は兄・裕太(現・釜石シーウェイブスRFC)と同じ早稲田大でのプレーを心に決めていた。全国区の東福岡高への進学という選択肢もあったが、早稲田大入学も考えて進学校を選んだ。

 早稲田大では大学1年から公式戦に出場。現在、日本代表でも共にプレーするSH齋藤直人(東京SG)、SO岸岡智樹(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)とルーキートリオとして注目を浴びていた。秋の公式戦を前に、早大上井草グラウンドで3人揃ってのインタビューを行ったことがあった。そのサイズには目を見張るものがあったが、花園常連の神奈川・桐蔭学園高出身の齋藤、東海大仰星高の岸岡が取材慣れしていたのに対して、中野はシャイで朴訥とした印象だった。

 髪型など、おしゃれ意識は高そうだが、感情を内に秘めたタイプ。その硬派な九州男児という口調からイメージが重なったのは、早稲田大時代の元日本代表FB五郎丸歩さんの姿だった。2人に共通するものを平たく言えば、いわゆる“ツンデレ系“。本当は話したいことがあっても多くを語らず、ラグビーならプレーで見せようという男臭さを漂わせた。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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