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なぜ7人制ラグビーは東京五輪で惨敗したのか キーマン2人の言葉から紐解く本当の敗因

リオ五輪以上の強化はできたのか

 チームの評価は、第一に大会の結果でシンプルに評価するべきで、今回の成績を見れば語らずも明らかだ。この結果については、個々に受け止め方は違うかも知れない。重要なのは、望んだ結果に到達出来なかった要因を洗い出し、3年後に迫る次回五輪へどう生かせるかだ。それが出来るのは、代表チームであり日本ラグビー協会だけだ。

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 冒頭のコメントでも判るように、岩渕HCはコロナ禍の中で思い切った強化、五輪本番でも思い切った戦術を打ち出せなかった自らの責任を認めている。同時にチームの実力を「東京オリンピック前のタイミングで、シードは11番目だったので、そのくらいだろうと分かっていた」とも語っている。6大会で中止(日本は5大会に参戦)となった2020年のワールドシリーズは年間合計10ポイントで16番目、フルスペックで行われた19年は総合15位(27ポイント)だった。

 一方、リオ五輪直前の16年シーズンも15位(21ポイント)と、世界での位置づけは大差はない。日本の場合は、実績としては常に下位にいながら、五輪の一発勝負では対戦相手の徹底した分析などで上位入りを狙っているのが常なのだ。16年には世界15位というポジションから4位に食い込んだが、今回は期待通りにはチームを引き上げることが出来なかったのが揺るぎない現実だ。

 では、東京五輪までの4年ないし5年という強化の中で、チームはリオ当時からどう進化してきたのかを考えてみたい。再び岩渕HCの説明だ。

「リオから前向きな数字が出ています。2020年3月までのワールドシリーズであれば、前の4年間よりも、勝敗数についてはいい結果がでていると思います。そういう意味では、前に進む成果を挙げられていたと思います」

 このコメントだけ見れば、チームがリオ五輪までの強化以上に成長していると受け止めることができるが、加えてこうも語っている。

「地力をつけるまでいってないと思う。あくまでも結果として、戦績として良くなった、以前は勝てなかった相手に勝てるようになった、あるいは勝ったことがある、という意味では過去よりもよくなった」

 なかなか難しい言い回しだが、2つの発言をまとめると、東京五輪までの5年間でリオに挑んだチームを上回る成績もあったが、それは一時的な振り幅として残せたものだという解釈でいいのだろう。しかも「いい結果」といっても、下記のようなワールドシリーズにおける2人のHC就任後の年度ごとの成績を見比べると、「上回れた」と評価するべきかは個々の意見が分かれるところだろう。

【瀬川】左から(年・順位・勝点)
2013 19 2
2014 16 9
2015 15 21
2016 15 21
(通算16勝5分76敗 勝率17.4%)

【岩渕】
2019 15 27
2020 16※ 10
※コロナ感染の影響で6大会で打ち切り
(通算13勝3分61敗 勝率17.6%)

 視点を変えて、選手やチームの質の面での進化を首脳陣はどう受け止めているのだろうか。同HCに聞くと「選手のクオリティーが確実に上がってきたと思う。リオのときのクオリティーが低いというのではなく、(地元開催の)東京大会ということがあって、リオを経験した選手がいて、オリンピックを1度経験した後、あるいは経験できなかった選手が一緒になって強化を前に進めて、要はオリンピックとしての貯金を初めて日本は得ることになった。それを強化の中で選手もスタッフも生かすことができたのは、非常に大きな前向きなところだったと思う」と語っている。前回五輪で世界4位まで戦ったことは、得難いほどの経験という遺産をチームに残したのは間違いない。

 だが、「ポスト・リオ」のチームとして、何に拘り、何を進化させてチームのクオリティーを上げてきたのかを、明快に聞くことは出来なかった。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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