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なぜ7人制ラグビーは東京五輪で惨敗したのか キーマン2人の言葉から紐解く本当の敗因

前回4位だった指揮官の交代をどう考える?

 1年の延期は参加した全チームが同じようにあてがわれた時間でもある。もちろん岩渕HCには、海外遠征が難しかった日本が、他国よりも十分な強化ができなかったという思いがあったのは理解できる。だが、様々な障壁の下で強化を続けてきた事実は、どのチームも変わらない。この1年ないし1年半の取り組みだけが、五輪での勝敗を分けたと考えるのは乱暴すぎる。しっかりと、本来計画されていた20年7月までに、どのような強化が達成出来たのか、或いは出来なかったのかを代表首脳陣、そして協会はしっかりと検証した上で、延期により生じたエキストラタイムの強化がチームにどのような影響を及ぼしたのかを論じるべきだろう。

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 今回の会見では、リオ五輪後から長らく個人的に感じていた疑問を本城ディレクター、岩渕HCに直接ぶつけてみた。

「リオで4位になったコーチを解任したのは、間違っていなかったのか」

 リオ大会後の人事に関しても、詳細は過去のコラムでも触れているので参照していただきたいが、前回大会で日本代表を4位に導いた瀬川智広HC(現摂南大ラグビー部監督)を解任した理由は、東京でメダルを獲れるチームを作れるコーチを求めたからだ。つまり、瀬川氏の指導力ではメダルを獲るには不十分という評価を下して、世界4位の指導者を解任して、結果的に岩渕HCがタクトを握ったことになる。

 この質問に対して2人の回答は、以下のようなものだった。

 本城氏「それは、わからないですね。今回こういう結果だったのは事実ですけど、リオと同じ体制で今回臨んでいないので、正直わからないです」

 岩渕HC「それは仮定の話なので、どうなっていたかは当然わからないですし、続けたほうが良かった、続けないほうが良かったというのは、例えば過去に15人制代表でもいろいろな議論が起こりました。それ自体は、なかなかどっちのほうが良かったかは答えることはできないと思います。ただ、結果的に今回のこうなってしまったことに関しては、自分がクリティカル(重要)なところでチャレンジできなかったことに大きな責任を感じています」

 正直な気持ちとしては、「間違っていなかった」という確信に満ちた言葉と、その論拠を聞きたかった。それはひとえに、この2人が、世界4位を果たし、続投の意志もあった指導者を敢えて外した張本人だからだ。参加12か国中11位、1勝4敗という成績では、なかなか強気な主張はしづらかっただろうが、5年前の人事が果たしてどこまで正当性のある決断だったのか、あるいは過ちだったのかを判断するには物足りない回答だった。

 結果がどうなるか何も保障されていないのがスポーツの常である一方で、チームが達成できたもの、出来なかった事、なぜ出来なかったのかを、しっかりと合理的に検証することは不可欠だ。代表チームを運営するラグビー協会としては、勝った負けただけではなく、協会およびチームが立てた強化方針がどこまで正当性のあるものだったかを振り返ることは、次代の日本代表強化のためには避けては通れない重要な意味を持つはずだ。

 15人制ラグビーに比べると遥かに番狂わせが多いのが7人制の面白さであるのは間違いない。東京五輪にリオ当時の体制で臨んだとして、4位以上の結果になった保証は何もない。その一方で、今回の11位という成績が、予想外の相手に敗れたなどという不運からもたらされた結果なのかと考えれば、そうではないだろう。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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