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米国の大学スポーツの闇 名門校で起きた「替え玉受験と賄賂」不正入学のからくりとは

不正入学の背景に「運動部コーチの弱みと超富裕層の親の強欲」

 では、なぜ、大学の運動部のコーチが賄賂を受け取って、不正入学に手を貸したのか。

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「オペレーション・バーシティー・ブルース」では、有罪判決を受けたスタンフォード大セーリング部の元コーチが証言者として登場している。この元コーチは、渡された賄賂を全てセーリング部のために使っていた。大学から資金を集めるようにというプレッシャーを受けていたことを明かした。

 資金集めの苦労していたのはスタンフォード大学のこのコーチだけではないようだ。このスキャンダル事件の背景について、2019年3月19日付のニューヨーク・タイムズ電子版はこのように伝えている。

「例えば、アイビーリーグでは、ほとんどのコーチが大学から割り当てられるお金と、競技を成功させるために必要なお金のギャップを埋めるための資金の調達を担当している。選手の家族が寄付金額の筆頭者となることがあり、チーム構成を決めるときには、不愉快な決断につながることがある」

 資金集めに奔走しなければいけない運動部のコーチの弱みと、名門大学にこだわる超富裕層の親の強欲を、シンガーは巧妙に突いた。

 もともとアメリカの大学は寄付を集め、よいトレーニング施設、強い運動部を作り、そのことによってトップ高校生をリクルートして、さらに強いチームを作る。そして、大学卒業者に愛校心を持ってもらい、さらに寄付につなげるという循環がある。

 そして、米国の大学スポーツは、アメリカンフットボール部やバスケットボール部が放送権や入場券収入を得て、他の運動部に分配し、寄付を募り、プロ顔負けの施設を作り、すばらしい環境でプレーできると宣伝されている。しかし、それらを手放しで称賛するのは、表の顔だけを見て話をしているだけなのかもしれない。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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