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マラドーナを封じた元Jリーガー 「W杯優勝の自信がない」チームはなぜ変貌したのか

仲間を信頼し、マラドーナのマークを離れて攻撃参加

「それから4週間は、ビールを一滴も飲まないくらい集中したよ」

 そう言いながら、わざわざそれがジョークなのを説明するのが律儀なところだ。

「いや、ホントは食事の後とかに飲んだけれど、そのくらい集中したというたとえだよ」

 大きなヤマは、決勝トーナメント初戦のオランダとの試合だった。2年前には、地元開催の欧州選手権準決勝で1-2と敗れていたが、2-1で雪辱する。

「オランダ戦は個人的にも大成功だった。欧州選手権の時は、怪我でオランダ戦を欠場。僕が出なかったことが敗因だと言われた。それから代表に必要な存在になったと自覚したんだ」

 決勝の相手は連覇を目指すアルゼンチン。2大会連続で同じカードとなったが、4年前とは完全に立場が入れ替わった。結果は1-0だったが、ブッフバルトはディエゴ・マラドーナのマークを離して何度も攻め上がった。

「相手は中心選手が3人も出場停止で、マラドーナ以外はどこをとっても僕らのチームの方が上だった。攻撃に出ても、他のメンバーがカバーしてくれるから心配はなかった」

 大柄だが、実はテクニシャン。チーム内でのニックネームが「ディエゴ」だった男は、後に在籍した浦和レッズでも機を見た攻撃参加でサポーターを魅了した。

【了】

加部究●文 text by Kiwamu Kabe


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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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