「子育てに手応えのある人はいない」 健常者とは異なる環境でジュニア育成に試行錯誤する現状【車いすバスケ】
車いすバスケットボール界で青少年育成の試行錯誤が重ねられている。2日まで東京体育館で行われた天皇杯で3位になったNO EXCUSEは、2023年にアカデミーを創設。及川晋平ヘッドコーチ(HC)は遊びから体をつくり、認知力を育む環境を根付かせようとプログラムを使った指導をしている。

車いすバスケットボール天皇杯
車いすバスケットボール界で青少年育成の試行錯誤が重ねられている。2日まで東京体育館で行われた天皇杯で3位になったNO EXCUSEは、2023年にアカデミーを創設。及川晋平ヘッドコーチ(HC)は遊びから体をつくり、認知力を育む環境を根付かせようとプログラムを使った指導をしている。
NO EXCUSEには13~16歳の男子5人が登録されている。ジュニア世代に成長の場を与えるプログラム「NExt」のメンバーだ。トップチームの主力で日本代表の香西宏昭が米イリノイ大で学んだ経験を基に中身を作成。及川HCは「日本で計画的にやってみよう」とスタートさせた。
子どもは遊びを通して判断力がついていく。及川HCは「(健常者は)公園で遊んで、部活に行って、という形がもうつくられているが、車いすの子どもたちにはない。まずそういう環境をうちのチームでつくろう」と意図を込めた。「日本は見よう見まねで経験をただ伝えていくレベル」。まだ遊び段階の青少年に体系的なメニューで指導した。

東京パラリンピックで日本代表HCを務めた及川氏。車いすバスケを楽しむ中で「日本代表に行きたい」と夢見る子どもの増加を期待する。プログラム開始から2年。「手応えなんかない」と語るのは、決まった形がないからだ。
「僕らも常に試行錯誤しながら、何がいいのかボールを投げ、子どもたちのリアクションを受け取ってやっている。子育てをしていて、手応え持っている人はいないんじゃないか。『ちゃんと育てています』なんて誰も言えない。そういうことです、人を育てていくというのは。こっちがちゃんと向き合わないと」
個性に合わせ、子どもと車いすバスケの成長を見守っていく。
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)