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「勉強しなさい」だけでは逆効果? ドイツ育成年代で重視、子供の成長促す“3つの柱”

学校生活が上手くいっていないと「プレーにも影響を及ぼす」

 クラブとして、指導者として、子供たちとどのように向き合うことが求められるのだろうか。次は、育成に定評があるブンデスリーガのクラブ、マインツ育成アカデミーで教育担当主任のヨナス・シュースターの言葉を紹介しよう。

「人間性の成長とプレーヤーとしての成長、そしてそれに加えて学校生活における成長が柱になります。私たちは毎月1回、私と育成ダイレクター、あとは学校の先生とでミーティングをし、全選手についてそれぞれの状況を確認し合います。学校ではどうなのか、チームではどうなのか、人間関係はどうなのか。そして、この3つの柱は常に影響し合っているんです。

 サッカーが上手くいっている時は学校でも上手くいくし、人間関係的にも問題がないというのはよくあるんです。ただ、それが怪我があったり、調子を落としたりで、スタメンで出られる頻度が少なくなったり、思い通りのプレーがなかなかできない時もありますよね。そうなると学校でのやる気も下がってくるので、成績も下がってきますし、誰かと話をしていてもちょっとしたことでイライラしてしまったりします。

 私たちのクラブでプレーしている選手は、やはりサッカーをメインにしている選手ばかりなので、サッカーにおけるパフォーマンスが他の要素に影響を与えるという関係性が強いですね。

 学校のことがスムーズにいっていないと、それがプレーに影響を及ぼすという流れもあります。成績があまり良くなかったということから、今やっている内容がよく分かっていない、宿題が残っているから練習が終わってからやらないと、ということが頭にあると、練習にも100%集中するのが難しい時もあります。

 学校の優先順位を高くしすぎないというのは大事かもしれません。『学校が一番大事でサッカーはその次』というのがベースですし、私たちは子供たちにも両親にも常にそう伝えています。ただ、それは『学校で常に最高レベルの成績を残せ』ということではありません。努力をしようともしていない子供への対処と、努力しているけど結果につながらない子へのアプローチは全く違ってきます。強すぎるプレッシャーがストレスになってしまうと、いろんなところに悪影響が出てきてしまう。あくまでも無理のない範囲で、過不足のない取り組みをしてくれれば大丈夫というニュアンスで考えることも大切だと思っています」

 いろいろな子供たちがいる。学校における勉強に自然とついていける子もいれば、努力しても苦戦する子がいる。気をつけようとしていても、なかなか集中できない子だっている。体を動かすことで集中できる子もいるけど、それが許されないから苦労している子だっている。それぞれの子にそれぞれの特徴がある。どんな家庭環境で育ってきたかによっても違いは大きく出たりする。

 一つの枠組みの中にはめ込もうとするだけではなく、お互いにコミュニケーションを取りながら、上手くバランスの取れたスケジュールで学校ともサッカーとも上手く向き合えるような関係性と環境整備を考えてあげたい。

(中野 吉之伴 / Kichinosuke Nakano)

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中野 吉之伴

1977年生まれ。ドイツサッカー連盟公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。ドイツでの指導歴は20年以上。SCフライブルクU-15チームで研鑽を積み、現在は元ブンデスリーガクラブであるフライブルガーFCのU12監督と地元町クラブのSVホッホドルフU19監督を兼任する。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に『サッカー年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)、『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)がある。WEBマガジン「フッスバルラボ」主筆・運営。

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