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新谷仁美らを育てる陸上コーチ・横田真人 選手たちの“その後”を本気で考える指導論

横田氏がコーチとして気を付けていること、心掛けていることとは【写真:小野瀬健二】
横田氏がコーチとして気を付けていること、心掛けていることとは【写真:小野瀬健二】

選手が自分自身で選択し、主体的に考えられるようコーチングする

――コーチとして気を付けていること、心掛けていることを教えてください。

「メソッドのようなものは特に作らないようにしています。選手それぞれ求めてくるものが違うので、それに合わせているんです。私は良くも悪くもこだわりがまったくない、いわゆる結果主義なんですよね。速ければいいし、稼げればいいし、その選手が幸せならいい。そのために一人ひとりに寄り添うという点は、コーチとして大切にしています。

 例えば走り方を変えるよう指示したことで結果を出した選手もいるし、逆にそういうテクニックをまったく教えなくても結果を出している選手もいます。中には家に引きこもっちゃう選手がいて、一時期は毎日のように家まで足を運んだこともありました。一人ひとり、本当にまったく違うんですよ。

 だから、とにかくちゃんと見てあげること。何か言いたいことがあっても、選手の状況を見て、時を待つ間はただ見守り、少しずつ時間をかけて伝えていったりすることもあります。選手は都合よく解釈しがちなので、遠回しに言っても大体は響きません。一方でダイレクトに言い過ぎると、逆効果になってしまうかもしれません。だから、タイミングと伝え方はとても大事にしています。

 また選手たちには『結果が一番大事だ』と伝えていて、オリンピックを目指すと公言しない人はチームに入れないと決めています。それが何年後でも構いませんが、オリンピックや日本代表などの目標は絶対条件。だって、言葉にできるくらいの気持ちがないなら絶対にオリンピックなんて無理じゃないですか。もちろん、結果が出るかどうかは誰にも分からないこと。でも、そのための努力を第一優先にするっていうのは、絶対にブレちゃいけないと思っています。

 競技の結果は選手としてではなく、その後のキャリアにもつながります。スポーツの世界では結果を出さないと、何を言っても説得力がありません。だからこそ、やはり競技の結果が第一にこなければいけないと思うんです」

――アメリカでの競技生活と比べて日本陸上界の指導は横田さんにはどう映りますか?

「日本の指導は、すごく緻密で良いと思います。でも一方で、もう少し本当の意味での主体性を選手に持たせてあげた方が良いのかもしれません。自ら動ける選手を育てる。これを、やはり視野に入れないといけない気がします。

 例えばオリンピックやスポーツのあらゆる問題についてアスリートに意見を聞いても、おそらく自分の意見を言えないし、そもそも考えることができない。日本は環境が整っていたりルールが設けられていたり、コーチが全て決めてくれることも多いので、考えなくても競技できてしまうんですよ。

 中には練習メニューをいくつか並べて、選手たち自身に選ばせているという指導者もいます。でも、そんなの選択じゃありませんよね。もっと手前に、そもそも『やる・やらない』の選択があるし、練習場に来るかどうかだって本人の判断です。だから選択をする余地、考える余地をたくさん与えること。多くの指導者はティーチングは上手なのですが、本当の意味でのコーチング、つまり引き出すところが不足していると感じるので、そこが課題なのかもしれません」

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