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キッズ年代にエリート教育は必要か ドイツ人指導者が訴える「結果より体験」の大切さ

人間性も優れた選手がプロになれるようにサポートするのが育成指導者の役割

 サッカーとは技術ある選手が集まれば、上手くいくスポーツではない。サッカーはチームスポーツだ。指導者仲間でもある元ドイツ代表DFルーカス・シンキビッツが、こんなことを話していた。

「様々な関わり方ができるから、サッカーは面白いんじゃないか。様々な勝ち方があるから、ドキドキワクワクするんじゃないか。技術に優れた選手は必要だけど、みんながみんな同じようなプレーをしたからって、相手を上回ることができるのか?」

 だから、サッカーというスポーツにおける優れた選手に関する正しい定義を持つことが大切なのだろう。

 常に次のアクションを探して動いていられる選手、スムーズに味方をつなぎ合わせるポジショニングを取ることができる選手、相手ボールへの距離の詰め方が巧みな選手、相手の攻撃を食い止める泥臭いプレーができる選手、体を張って相手の攻撃を跳ね返し続ける選手、瞬時に状況を的確に判断してやるべきプレーを見つけることができる選手、味方が迷っている時にすっと言葉をかけてあげられる選手、どんな時でも前向きにプレーできる選手。

 今そうした選手は選考対象に入っているだろうか。いや、そうした選手こそ評価されるべきではないだろうか。そのプロクラブに集まった子供たちに、「君たちが誰かより偉いからとか、凄いから集められたわけではないんだよ」ということを、ちゃんと伝えられているだろうか。

 人間性の優れた選手が必ずしもプロ選手になるわけではないという意見もあるけど、選手として資質があり、そして人間性も優れた選手がプロ選手になれるように取り組み、サポートするのが育成指導者の役割ではないだろうか。

 だから、どんな選手が優れているかを競い合わせる構図ではなく、どんな要素を持ち合わせることがそれぞれの成長にとても大切なんだよと伝えていくことのほうが重要なのではないだろうか。キッズエリートという言葉であおるのはなく、子供たちが将来人間としても、選手としても自立して、自主的に取り組んでいけるようになるために、どんな取り組みがふさわしいのかを考慮し、配慮していかなければならないのではないだろうか。自分たちで問題を解決したり、考えたり、友だちと話し合うことができないことから、目を背けてはならないのだ。

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中野 吉之伴

1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。

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