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コーチが注意すべき「must」と「should」の使い方 理不尽な言葉が選手に及ぼす悪影響

ただ「頑張ろう」では説得力を欠く

 指導者から前向きな言葉をかけられ続けた選手たちは積極志向になり、負けを連想させる言葉を聞き続ければ、どうしても負けをイメージしがちになる。

 サッカー界では、よく「気持ちを出して戦う」とか「気持ちの差が出た」などというコメントが飛び交う。だが、もはや「気持ちにもエビデンス(立証)が必要になっている」と塚本は指摘する。

「同じようにパッションで選手と向き合うにしても、どういうコミュニケーションの取り方をすれば効果的なのか、どんな言葉を駆使したほうが良いのか。主観で語るよりは、集積された何千ものサンプルを基にしたほうが確率が高い。それを調べもしないで、ただ頑張ろう、では説得力を欠きます」

 チームを指揮する場合は、同じハーフタイムでも、リードした場合と劣勢の時では話す内容を変える必要がある。

「勝っている時は、選手たちも乗っているので積極的な意見を引き出す方向で良いと思います。逆に負けている場合は、だいたい選手たちもどこが悪いか気づいているので、コーチが叱咤してもうるさいだけです。むしろ具体的に戦術を整えてあげるほうが効果的です」

 印象的だったのは、前半をリードされて終わった時のエディー・ジョーンズ(元ラグビー日本代表ヘッドコーチ)の対応だった。

「良くないのは分かっているよな。では修正して」

 これだけ言い残してロッカールームを出てしまった。

 またリバプールのユルゲン・クロップ監督は、「監督がハーフタイムを有効に使える時間は限られている。その中で簡潔に伝えることが重要。ずっと大声で叫んだり、選手を尋問したりするようなことは必要がない」と、大半を選手たちの自由にさせて、ラスト数分間だけ鼓舞して送り出すそうである。

「負けているからと感情に訴えるやり方は消耗品に近いので、継続するのが難しい。また高揚させ過ぎると、交感神経が高まり逆に集中の幅が狭まる危険性もあります」

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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