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朝練、球拾い、応援団… 元スペイン代表GKが唖然、日本の育成年代に抱いた疑問

FC市川GUNNERSの代表を務める幸野健一【写真:編集部】
FC市川GUNNERSの代表を務める幸野健一【写真:編集部】

高校野球を見てロペス氏が絶句 「この時代に、そんな怖いことが…」

 日本の妙な習慣も、ロペスは不思議で仕方がない様子だった。

「ドリブル専門のスクール、朝練習、自主トレ……、これほど情報化が進んだ時代だ。もし効果があるなら、欧州でも取り入れているはずだろう」

 もちろん、幸野も同感だ。

「サッカーは、認知、判断、実行の繰り返しです。今、何をするべきか、選手たちは一瞬で判断して実行に移さなければならない。ところがドリブルという実行の部分だけ上達しても、肝心の前段階が備わっていなければ、足もとに来たボールはすべてドリブルで運ぶ選手ばかりが生まれてきてしまいます」

 そしてロペスが最も驚愕したのは、テレビ画面に全国高校野球選手権の中継が流れてきた時だった。

「どうして、みんな選手たちは髪の毛がないんだ?」
「たぶん強制だと思うよ」
「この時代に、そんな怖いことが起こっているのか! しかもこれほど酷い光景がずっとテレビで放送されているのに、誰も何も言わないのか? 欧州ならすぐに訴訟が起こって大変なことになっているぞ」

 履き違えた過剰な勝利至上主義が鏤められているのに、それを日本人は当然のことだと捉えてしまっている。

 ロペスは言っていたそうである。

「勝利を求めて反省するのは大切だ。しかしどうしても相手が強いことはあるし、いつまでも引きずっていても仕方がない。現実を認めて、明日また頑張ろうと切り替える。それで何がいけないんだ」

 遊びのはずだったスポーツがテレビ中継され過度に注目が集まり、負けた選手たちはこの世の終わりかのように泣き崩れる。

「だから日本にはグッドルーザーが生まれない」

 幸野はそれが残念でならない。(文中敬称略)

[プロフィール]
幸野健一(こうの・けんいち)

1961年9月25日生まれ。7歳よりサッカーを始め、17歳の時にイングランドへ渡りプレーした。現在は育成を中心にサッカーに関わる課題解決をはかる「サッカー・コンサルタント」として活動。2014年に「アーセナルサッカースクール市川」を開校させ、代表に就任。19年に「FC市川GUNNERS」にチーム名変更、20年3月から業務提携した市川SCのGMに就任した。息子の志有人はJFAアカデミー福島1期生のプロサッカー選手で、09年U-17W杯に出場した。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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