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アスリートの容姿報道、課題は「記事のコメント欄」 羽根田卓也が男性側の視点で語る問題点

ネットのコメント等で自分への捉え方、見られ方を感じるという羽根田【写真:荒川祐史】
ネットのコメント等で自分への捉え方、見られ方を感じるという羽根田【写真:荒川祐史】

ネットの声で深めた自覚「1つコメントがつけば、何万人も同じ思いでいる」

――野球・サッカーのように番記者が毎日張り付き、試合結果や内容が報じられる競技とでは報道されることに対する認識が異なってきます。一方で、羽根田選手も男性的な魅力を切り取る消費のされ方も経験しました。

「僕も今思えば、そこまでやらなくても良かったと思うものもあります。求めるものに完全に応えた時期がありました。(リオ五輪メダル獲得後の)露出が始まった最初の時期ですね。そういうものに応えていると、露出は掛け算方式でどんどん増えていく。露出が増えれば、カヌー競技の宣伝になると分かっていました。でも、同時に必ずしも好ましい目で見ている人ばかりじゃないと気づきました。

 ひょっとしてカヌーのリスペクトに繋がらないんじゃないか? という疑問が浮かんで。それはバランスの取り方の問題です。(要求に応えるものを)絞れば絞るほど、抑えれば抑えるほど、取り上げられなくなるのは当たり前。取り上げていただきながらも、カヌーのプレゼンス(存在感・影響力)を失わないように自分がどう振る舞っていったらいいのか、ある時期からより考えるようになりました」

――好ましい目で見てない人もいると感じたのはどんな場面でしょう?

「一番分かりやすいのはネットです。記事のコメント、ツイッターのつぶやきは自分へのリアクションが一番分かります。例えば、1つ嫌なコメントがある。あ、こういう捉え方、見られ方を自分はしているんだと感じる。1つコメントがついているということは日本で何万人が同じことを思っているはず。一言一言の発言、振る舞いを見られ、すべてが自分の競技に繋がってくる。カヌー=羽根田卓也のイメージになってしまうから、自分が責任を持って気を付けるべきだと感じました」

――カヌーという競技は羽根田選手をきっかけに認知されるものになりました。今後、どれだけ日本で普及されるかという視点で、競技とメディアの関係で感じている課題はどんなことでしょうか?

「とにかくもっともっと取り上げてもらうこと。競技の良さ、面白さはどうしてもやった人にしか分からないし、理解しづらい。僕もやったことがない他のスポーツを理解しようとしても相当好きじゃないと、なかなか理解できない。まずはカヌーを体験してもらい、どんどんファンを増やしていかなければなりません。カヌーにはレジャー性という面もあり、レジャーでのカヌー経験者は相当数いらっしゃると思います。そういった方々をいかにさらに増やし、競技にも目を向けてもらうというアプローチも今後必要です。

 そういった積み重ねが続くことで僕の後輩が1つ、2つ、3つ……と五輪でメダルを獲って、メディアに取り上げてもらえればいいなと思います。カヌー界もオリンピックレガシー(東京五輪で造られた国内初の人工スラロームコース)も残っていて、その活用がキーになってきます。それをきっかけにカヌーもどんどん普及も強化もしていくし、宣伝にもなって広まっていく。何やったらいいか分からない状況ではない。自分のやるべきこと、道筋はしっかりしています」

(28日掲載の後編へ続く)

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)


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羽根田 卓也

リオ五輪カヌー銅メダリスト THE ANSWER スペシャリスト

1987年7月17日生まれ。愛知・豊田市出身。ミキハウス所属。元カヌー選手だった父の影響で9歳から競技を始める。杜若高(愛知)3年で日本選手権優勝。卒業後にカヌーの強豪スロバキアに単身渡り、スロバキア国立コメニウス大卒業、コメニウス大学院修了。21歳で出場した2008年北京五輪は予選14位、2012年ロンドン五輪は7位入賞、2016年リオ五輪で日本人初の銅メダル獲得。以降、「ハネタク」の愛称で広く知られる存在に。東京五輪は10位。2022年1月、パリ五輪を目指し、現役続行することを表明した。175センチ、70キロ。

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