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重い貧血、PMS、子宮内膜症… 35歳の引退まで病と向き合った陸上・室伏由佳の競技人生

貧血、月経困難症、PMSなど長年、病と向き合った競技生活

 室伏さんは、陸上一家に育った。

 ハンマー投げで「アジアの鉄人」と呼ばれた父・重信氏。2004アテネ五輪男子ハンマー投げで金メダルを獲得した兄の広治氏。

 そして、自身も同競技でアテネ五輪に出場。兄妹ともにハンマー投げ現日本記録保持者でもある(重信氏は日本歴代2位の記録保持者)。

 3人のオリンピアンという、堂々たるアスリート一家。一方で室伏さん自身は現役時代、貧血、月経困難症、月経前症候群(PMS)、子宮内膜症などを発症。中学生からスタートし35歳で引退を迎えるまで、長年、病と向き合う競技人生だった。

「自分は競技者として力がない」。中学で本格的に陸上を始めた当初から体力に自信が持てないでいた室伏さんは、そんな引け目を感じていたという。

「グラウンドを一周しただけで息切れがしていましたから、まともにトレーニングが出来なかった。練習についていけないと、周囲からは怠慢な選手に見られてしまうでしょう? 『ちゃんとやろうよ』と言われても、『いや、無理だから…』と思いながら、部活を続けていました。手を抜いているとみられていましたが、実際は手を抜かないとやっていけなかったんです」

 また、中学2年で初潮を迎えた後、10代の間は大きなトラブルはなかったが、20代になると、月経前の不調や月経随伴症状に悩まされるようにもなる。

「私の取り組んでいた競技(円盤投げ・ハンマー投げ)は、かなり機敏な動きが求められました。例えば、つま先の底背屈を速やかに繰り返して地面反力を得ながら力を発揮しますが、生理中はどうしても下肢がむくんで機敏に動かず、動作のタイミングがずれてしまいます。

 トレーニングをして、調子を上げなければいけないのに、生理前になると体が言うことをきかなくなる。イライラしたりすごく不安になったりして、選手時代はコーチである父に、ずいぶん当たりました」

 さらに、中京大学入学時(1999年)の健康診断で、自分が重度の貧血であることを知る。血液検査で示された血清鉄の値は4μg/dl(女性アスリートは160μg/程度が目安)。後年にオリンピック等の派遣手続きの際の健診時に測定された鉄の貯蔵の庫の大きさを示す数値フェリチンは1.6ng/mL(女性正常値5~120ng/mL)と、治療が必要とされるレベルだった。

「そのときに初めて、極度の貧血状態にあると知りました。中学生ごろまでの認識は貧血=立ち眩み。世の中には、立ち眩みをする特異体質の人がいるんだ、と思い込んでいました。

 私が『運動についていけない』と体感したのはスポーツを本格的に始めた中学の頃です。今となっては調べようがありませんが、成長期でしたし、筋肉を作るために血液を使われることもあり、貧血に陥ったことも考えられます。

 後年、子宮内膜症を患った際に、低用量ピルを用いた治療を行いましたが、その際に貧血が一気に改善しました。これらのことから、私は初潮を迎えた当時から、過多月経のために貧血に陥ったということも考えられます。当時練習についていけなったのも、この貧血が一因だったと考えています」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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