レジ打ちバイトも経験した「遅咲き」の柔道人生 国立大進学、階級変更…五輪金メダルまでの転換点――柔道・角田夏実
ロス五輪は「ちょっと厳しい」 探している次の夢は…
その柔道人生は「遅咲き」と表現される。異論はない。
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「五輪に出る選手は世界ジュニアとか、ユニバーシアードを経験している人がほとんど。そこを私は経験してないので『何か、新しいね』って言われたりします。(パリ五輪の金メダルは)全く想像できなかったです。本当に内定するまで、オリンピックに出られるとは思ってなかったくらい」
金メダルから約7か月後の2月14日。角田は五輪以来の実戦となるグランドスラム・バクー大会で優勝した。五輪前から痛めていた両肩、両膝の治療を優先してきた影響で調整期間は短く、モチベーションの作り方にも不安はあったが「まず柔道を楽しむ、自分らしい柔道をしようと思って試合ができた」とゴールドゼッケンを背負っての初陣に安堵した。
世界が認めるオリンピック女王になった。これは長年抱えていた夢を失ったことも意味する。今の角田は、次の夢を探している真っ只中だ。
具体的に決めていることはないが、ロス五輪が行われる28年には36歳となるため「ちょっと厳しいな……っていうのは思っています」。将来的には後進の指導、競技普及と柔道に携わって生きていきたい考えはある。女性として家庭を持ち、両立したい希望も持つ。
これから自分がどんな道を歩めばいいか、まだ霧の中で悩んでいる。ただ「角田夏実」として、五輪金メダルまでの長い道中にいくつもの決断を下してきた。これから先も同じだ。
「やっぱり後悔しないこと、自分らしくというのを大事にしてきた。柔道もそうですし、今までと変わらない、何事も楽しめるような前向きな人生を送りたいです」
■角田 夏実 / Natsumi Tsunoda
1992年8月6日生まれ。千葉県出身。小学2年から父親の影響で柔道を始めると、八千代高を経て東京学芸大に進学。大学で寝技の技術に磨きをかけると、2013年の学生体重別選手権で自身初の全国優勝を果たす。了徳寺大学(現・SBC湘南美容クリニック)に進み16年のグランドスラム・東京大会で優勝。19年に52キロ級から48キロ級に階級を変更。21年世界選手権から日本の女子選手として史上3人目となる3連覇を達成。2024年パリ五輪で金メダルを獲得した。
(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)
