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「男性の体と違うこと受け入れて」 実は女性に多い膝の怪我、サッカー永里亜紗乃の提言

「THE ANSWER」は3月8日の「国際女性デー」に合わせ、女性アスリートの今とこれからを考える「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」を始動。「タブーなしで考える女性アスリートのニューノーマル」をテーマに14日まで1週間、7人のアスリートが登場し、7つの視点でスポーツ界の課題を掘り下げる。6日目のテーマは「女性アスリートと膝の怪我」。女子サッカーの元なでしこジャパン・永里亜紗乃さんが登場する。

「女性アスリートと膝の怪我」について語った永里亜紗乃さん【写真:荒川祐史】
「女性アスリートと膝の怪我」について語った永里亜紗乃さん【写真:荒川祐史】

「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」6日目、テーマは「女性アスリートと膝の怪我」

「THE ANSWER」は3月8日の「国際女性デー」に合わせ、女性アスリートの今とこれからを考える「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」を始動。「タブーなしで考える女性アスリートのニューノーマル」をテーマに14日まで1週間、7人のアスリートが登場し、7つの視点でスポーツ界の課題を掘り下げる。6日目のテーマは「女性アスリートと膝の怪我」。女子サッカーの元なでしこジャパン・永里亜紗乃さんが登場する。

 現役時代は膝の故障に悩まされ、計3度の手術を経験。医者から「歩けなくなる」と言われ、27歳の若さで引退した。サッカー選手に限らず、男性に比べて女性アスリートに膝の怪我が多いことはあまり知られていない。永里さんは実情を明かし、性差が考慮されていない今のトレーニング方法、日本の同調圧力の中でも発信する大切さなどを語ってくれた。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 ◇ ◇ ◇

「このままサッカーを続けていたら歩けなくなる」

 26歳の夏。医者に突きつけられた現実は、重かった。

 永里さんは10代から世代トップクラスで活躍し、各年代で日本代表を経験。攻撃的なFWとして、2012年なでしこリーグでは18試合19得点でベストイレブンに輝くと、強豪ドイツに渡った。しかし、プレー中の着地のミスが原因で、高校生で左膝、大学生で右膝を痛め、ともにメスを入れた経験がある。

 2015年6月のカナダW杯では、1学年上の姉・優季とともに日本代表入り。なでしこ初の姉妹同時出場も果たしたが、当時の膝は「ギリギリの状態だった」という。

 所属クラブに戻った時には練習に参加できないほど。住んでいた部屋は4階だったが、エレベーターがなかった。「階段を上るのも降りるのも痛くて、苦痛でしかない。練習場に行くのが億劫になるくらいでした」。日独で検査を受けたものの、診断名はなし。長年の負荷が蓄積し、軟骨が剥がれていることで慢性的に痛みが生じていた。

「そこでドイツのドクターに『慢性的なものだから、このまま続けていたら歩けなくなるよ』と言われました。日常生活で何をしても痛かった。この痛みが死ぬまでなくならないのか、と。そうしたら、段々と心も痛んできて『こんなに痛いの? じゃあ、ずっとこの生活……』となったら、もうサッカーどころじゃない。思う存分できない状況だったので、医者から聞いた時は言葉が素直にスッと入ってきました」

 同年9月、剥がれた軟骨のクリーニング手術を日本で受けた。しかし、痛みはあまり変わらず。「思いっ切りサッカーができないとなった時に、そこまでしがみついてやっていてもなと思いました。ベストプレーができない方がつらい。歩けなくなって、将来的に車椅子になったらますます大変」。翌年4月に27歳の若さで引退を発表した。

 サッカーに限らず、実は女性アスリートは男性に比べて膝の怪我が多い。なぜ、男女の性差で違いが生まれるのか。

 骨盤幅が広く、内股となる骨格が理由の一つ。切り返し、ジャンプの着地、緩急のある動きの繰り返しなどの際、膝が内側に入りやすい。すると、膝周りへの負荷が大きくなり、膝の前十字靭帯損傷や膝蓋骨脱臼に繋がる。男女で筋肉特性も違う。月経に伴う周期的な体調変化も一つだ。運動の刺激に対して体内で起こる反応に性差が生じることは、多くの研究によって報告されている。

 しかし、「女性アスリートと膝の怪我」の実情は、世間で広く認知されているとは言えない。永里さんも「もの凄く多いですね」と実感がある。ただ、怪我とは無縁だった10代の頃は、教科書で学ぶ程度の知識しかなく、故障の原因や具体的な予防策などを知る機会はなかった。

「自分から踏み込んで聞くようなこともない。自分がこうなりやすいから、じゃあこういうトレーニングをしようと言われたこともないですね。いま思い返せば、言われたことを淡々とやって、何のためにやっているのか、このトレーニングが本当に自分の体に必要なのか、というところまで考えられていなかった。全く痛みもなく動けているし、若さゆえに元気もあって、自分の体に興味もなかったと思います」

 元気いっぱいに動けている時には気づかない。しかし、思ってもみないような怪我は突然やってくる。その時になって初めて大切な知識に出会うことが多い。永里さんは「チームのトレーナーから一つの考え方を聞けるけど、他にもいろんな考え方、選択肢がある。女性アスリートにとって、他のものに触れる機会は少ないのかなと思います」と現役時代を振り返った。

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