井上尚弥に8回TKO負け

　ボクシングの世界スーパーバンタム級（55.3キロ以下）4団体統一王者・井上尚弥（大橋）が4日（日本時間5日）、米ネバダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナでWBA世界同級1位のラモン・カルデナス（米国）との4団体防衛戦に臨み、8回45秒TKO勝ちした。2回にはダウンを喫しながらも逆転。レフェリーの試合終了の判断には「早かった」との声もあったが、敗れたカルデナス本人は「問題ないよ」と判断を尊重している。

　ラスベガスの観客、そして世界のボクシングファンを驚かせた。カルデナスは2回終盤、カウンターの左フックをかまし、ダウンを奪った。井上にとって昨年5月のルイス・ネリ戦以来、試合ではアマチュア時代を含めて人生2度目のダウン。会場は騒然となった。その後、モンスターの反撃に遭って敗れたものの、終始、前に出続けるスタイルはファンを魅了した。

　最後はレフェリーがストップする形で敗戦が決定。井上と対戦経験がある元WBC＆WBO同級王者のスティーブン・フルトン（米国）は「そろそろ止められるのは目に見えていたが、単純明快にこれは少し早すぎた」とXで指摘。「総じて言えば、単純明快に素晴らしいファイトだった」と両者を称えつつも、「しかし、あのレフェリーストップは少し早かったと思う」と繰り返している。

　カルデナス本人はどう感じているのか。米専門メディア「ファイトハブTV」は、公式YouTubeで試合後のカルデナスがインタビューに応じた動画を公開。ストップが早かったと感じたか尋ねているが、こんな答えが返ってきている。

「いいや。レフェリーに『大丈夫、俺は大丈夫』って言っていたんだけど、彼は『ダメだ。私は君を救わなくちゃいけない』って言っていた。レフェリーがその仕事を務めているのにはワケがある。彼らは長年ボクシングに携わっているんだ。だから俺はレフェリーが間違っているだとかは決して言わない。彼には俺にはわからない何かが見えたんだろう。問題ないよ」

　素直に結果を受け止めていたカルデナス。WBA1位のほか、IBF8位、WBO10位の世界ランカー。フードデリバリーサービスの配達員で食い繋ぎ、念願の世界初挑戦を迎えた苦労人だった。下馬評は圧倒的に不利だったが、正々堂々とした戦いぶりがボクシングファンの心を打っていた。