大谷翔平が全国の小学5年生に伝える“打撃の神髄” 教科書で説いた算数活用法…大人も驚き「痺れましたね」
大谷に算数教科書への登場をオファーした理由「狙い通りでした」
小学校の算数というと、暗記や計算というイメージがどうしても先に立つ。ただこの教科書の編集にあたって、狙いはそのイメージを変えることにあった。「算数というと九九とか面積の計算とか、学習内容に目がいくと思うんです。でもこの教科書は、ものを考える着想やプロセスを伸ばす本にしたかった」と清水さん。そのためには「大人も日常生活で、算数を意識せずとも使っている」とわかりやすく説明する必要があった。
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そのためには、子どもたちも興味を持ちやすい、ワールドワイドな活躍をしている人材に「算数」を語ってほしかった。「誤解を恐れずに言えば、一見遠そうな人というのもポイントでした。実はみんなと同じようにものを考えているんだよというギャップですね」。検討の結果、浮上したのが当時エンゼルスの大谷だ。投打二刀流が米国でも本格的にスタートし、米球界を驚かせ始めた頃だった。
一見畑違いの取材依頼が、簡単に通るとは思っていなかった。「ダメだろうと思っていましたけど、大谷選手には子どもたちのためになるなら、という思いがあったのではないでしょうか」。まだ、新型コロナ禍の影響が残っていた時期だ。編集部の想いが大谷に届き、冒頭のオンライン取材が実現した。
取材前に、著書を読むなどの下調べをした。大谷は深く知れば知るほど、算数との親和性が高いと感じさせる人物だった。「筋道を立てて、積み上げていく方だなと。ゴールから逆算して落とし込んでいくんです」。日々野球ノートをつけているのも、その延長線上にある。この教科書では学習の基本として、しっかりノートを作り、考えたことを振り返りながら学んでいこうと訴えている部分でもフィットした。
「物事を解決するって、学校の勉強からは一見遠いかもしれません。でも子どもたちが憧れるアスリートもみんな、算数の考え方を今に生かしているんだよと伝えられた。狙い通りでしたね」
教育現場からの反響も上々だ。今年、同社の算数教科書の発行部数は、6学年合わせると482万6737部にも達する。1学年あたりにすれば80万人前後の子どもたちが、毎年大谷の“思想”に触れることになる。この中から、大谷翔平の思考法を進化させた次代のスターが誕生するかもしれない。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)