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海外選手を受け入れる宿泊施設の舞台裏 用紙10枚以上の「食のリクエスト」内容とは

Jリーグやラグビートップリーグをみてきた公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏が「THE ANSWER」でお届けする連載。通常は食や栄養に対して敏感な読者向けに、世界のスポーツ界の食や栄養のトレンドなど、第一線で活躍する橋本氏ならではの情報を発信する。今回は「選手が滞在する宿泊施設の舞台裏」について。

今回のテーマは「選手が滞在する宿泊施設の舞台裏」について(写真はイメージです)【写真:Getty Images】
今回のテーマは「選手が滞在する宿泊施設の舞台裏」について(写真はイメージです)【写真:Getty Images】

公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏の連載、今回は「選手が滞在する宿泊施設の舞台裏」

 Jリーグやラグビートップリーグをみてきた公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏が「THE ANSWER」でお届けする連載。通常は食や栄養に対して敏感な読者向けに、世界のスポーツ界の食や栄養のトレンドなど、第一線で活躍する橋本氏ならではの情報を発信する。今回は「選手が滞在する宿泊施設の舞台裏」について。

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 私たちスポーツ栄養士の仕事の一つに、選手が滞在する宿泊施設との交渉があります。食事は選手たちがよいパフォーマンスを発揮するために不可欠な、心身の基盤です。極度の緊張や慣れない環境下によるストレス、食べ慣れないものを口にするなどによって、体調を崩さないよう、何を、いつ、どのぐらい用意すればよいのか。食事担当者とやり取りを重ねて、調整・決定をします。

 私の場合、担当チームや選手の遠征時だけでなく、来日する海外のチーム・選手の食事担当者と宿泊施設の食事担当者の、調整役として入ることもあります。そして、世界的な強豪チームや、スポーツ先進国といわれるアメリカやオーストラリアのチーム担当者と接するたびに、食事に重きを置く彼らの姿勢を感じています。

 メニューを考案する栄養士は、食事に関する要望をまとめた「Menu Request」を宿泊施設に提出します。リクエストは、チーム専用のオフィシャルな用紙に10枚以上、ギッシリと書き込まれていることも珍しくなく、要望の多さ、細かさに、日本の受け入れ先の担当者が舌を巻くことは多々あります。

 リクエストの内容ですが、海外の代表レベルや強豪チームともなると非常に具体的です。「低脂肪を心掛ける」「できる限り新鮮な食材を使う」といった基本的な考え方から、「肉は中まで良く火を通す」といった調理方法、「食事開始15分前までにセッティングを済ませる」などの食事の提供方法まで、一つひとつの食材、メニュー作りに対する考え方まで、きちんと書面化されています。

 例えば「朝食には4種類のシリアルに、プレーンヨーグルトとギリシャヨーグルトを用意する」「昼食にはセルフサービスのサンドイッチコーナーを設ける」「ケチャップは〇〇のブランドを用意する」という具合。食事はビュッフェスタイルで提供するため、「パンのとなりにはこの料理を置く」「温かいものと冷たいものを分ける」など、選手が料理を取りやすいように並べ方まで要望を出すチームも少なくありません。

 また、最近の傾向として、食材にオーガニックや地場のもの、平飼いの鶏の卵などをリクエストする欧米のチームが増えています。これは、選手の体や嗜好を重視してのことだけでなく、動物や地球環境の保護に対するチームとして取り組みの表れです。

 このように、食事にはチームの社会に対する考え方まで反映されています。チームとしてのヴィジョンが明確に示されているメニュー・リクエストを見るたび、食に対するこだわりもスポーツチームとしてのあり方を示す一つである、という認識を強く感じます。

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橋本 玲子

株式会社 Food Connection 代表取締役

管理栄養士/公認スポーツ栄養士

ラグビーワールドカップ(W杯)2019で栄養コンサルティング業務を担当。2003年ラグビーW杯日本代表、サッカーJ1横浜F・マリノス(1999年~2017年)、ラグビーリーグワン・埼玉パナソニックワイルドナイツ(2005年~現在)ほか、車いす陸上選手らトップアスリートのコンディション管理を「食と栄養面」からサポート。また、ジュニア世代と保護者に向けての食育活動も行う。アメリカ栄養士会スポーツ循環器栄養グループ(SCAN)並びに、スポーツ栄養の国際的組織PINESのメンバー。アメリカ栄養士会インターナショナルメンバー日本代表(IAAND)として、海外の栄養士との交流も多い。近著に『スポ食~世界で戦うアスリートを目ざす子どもたちに~』(ベースボールマガジン社)

URL:http://food-connection.jp/

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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