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「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」オンラインイベント第2部「食事と体重管理」

国連が「女性の生き方を考える日」と定めた3月8日の国際女性デーに向け、「THE ANSWER」は女性アスリートの今とこれからを考える「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」を開催。その一環として「女性アスリートのカラダの学校」と題したオンラインイベントが2部構成で6日に行われ、約150人が参加した。「食事と体重管理」と題した第2部では、講師にトップアスリートの栄養サポートを行う公認スポーツ栄養士の橋本玲子さん、ゲストに東京五輪ボクシング女子フェザー級金メダルの入江聖奈選手(日体大)を迎え、1、2部ともに元競泳日本代表の伊藤華英さんがMCを務めた。

「女性アスリートのカラダの学校」と題したオンラインイベントにゲストとして登場した東京五輪ボクシング女子フェザー級金メダルの入江聖奈選手【写真:中戸川知世】
「女性アスリートのカラダの学校」と題したオンラインイベントにゲストとして登場した東京五輪ボクシング女子フェザー級金メダルの入江聖奈選手【写真:中戸川知世】

3週間で計4kg減量、最後はグミ生活に… ボクシング金メダル入江聖奈が明かす体重管理

 国連が「女性の生き方を考える日」と定めた3月8日の国際女性デーに向け、「THE ANSWER」は女性アスリートの今とこれからを考える「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」を開催。その一環として「女性アスリートのカラダの学校」と題したオンラインイベントが2部構成で6日に行われ、約150人が参加した。「食事と体重管理」と題した第2部では、講師にトップアスリートの栄養サポートを行う公認スポーツ栄養士の橋本玲子さん、ゲストに東京五輪ボクシング女子フェザー級金メダルの入江聖奈選手(日体大)を迎え、1、2部ともに元競泳日本代表の伊藤華英さんがMCを務めた。

 ボクシングは階級によって体重制限が設けられ、規定を少しでも超えればリングに立つことすらできない。伊藤さんの「どのくらいの期間で何キロを落とすのですか?」という入江選手への質問でトークセッションがスタートした。

 フェザー級のリミットは57.15キロ。「私の場合は3週間で4キロ落とす感じ。男子には10キロ落とす選手もいて、逆に女子では全く減量の必要ない選手もいる。本当に人それぞれです」と入江選手。

「私は減量の最初は糖質や脂質を減らして健康的に痩せようとするのですが、最後はカロリーや脂質よりも食べる重量を落とす作業に入るので、脂質が少ないけど、糖質は取れて(重量が)軽い、グミを食べるようになります。シフトするのは、2週間前くらいから。私はそれで体調を崩したこともないので、グミは最高だなと思っています(笑)」

 では、減量時に感じる課題はあるのか。

「どうしても月経と減量が重なると減量が難しくなってしまう。なので、月経中は(体重を減らすより)維持するほうにシフトしています。私は半身浴で体重を落とします。本当は(目標まで)1.5キロくらいところから半身浴を始めるのですが、早く落としたいので3キロくらいのところから半身浴に入ってしまう。もっと計画的に体重を落としていけたら」

 ボクシング選手の食生活の話を初めて聞くこという橋本さん。やはり気になったのはグミだった様子。具体的にいつ、どのタイミングで食べているのか訊ねると、「練習が終わって夜ご飯を食べるのですが、その夕飯をグミに置き換えています」と入江選手。

「練習で1キロくらい体重が落ちるのですが、グミは1袋40グラムなので、40グラム食べて、300グラムの水を飲んで、そうしたら翌日にはその分が落ちて、前の日から1キロ分落ちる計算なので、夕飯をグミに置き換えています。1日の食生活でいうと、朝はお餅で始まります。

 1個50グラムを2個。お昼は練習前だと時間があるので、きゅうりでお腹を満たして、ちょっとグミを食べる。これだけだと練習の時に糖質が足りなくてフラフラしそうなので、練習前におにぎりや和菓子とか炭水化物を食べて、練習を乗り越えて、グミを食べて寝る感じです」

 この食事メニューには驚きを隠せない様子の橋本さん。便秘などの体調の自覚症状について訊ねると、「減量を始めると便秘はつきもの。尿さえもまともに出なくなるので、便が出たら最高というか、もう贅沢です(笑)」と正直に語ってくれた。

入江選手の話を受け、MCの伊藤さんやリスナーへ向けて公認スポーツ栄養士の橋本玲子さんが月経中の減量の難しさについて解説した【写真:編集部】
入江選手の話を受け、MCの伊藤さんやリスナーへ向けて公認スポーツ栄養士の橋本玲子さんが月経中の減量の難しさについて解説した【写真:編集部】

月経中の体重は「維持」の考え方がベスト、無理な減量はストレスに

 入江選手の現状について一通りヒアリングが終わると、まず月経中の減量の難しさについて橋本さんが説明した。

 月経前に体のむくみなどの不調を感じる人も多い。それは黄体期と呼ばれ、もともと減量がしにくい時期。ここで無理に体重を落とそうとするとストレスになり、「維持する方にシフトする」という入江選手の考え方はベスト。

 また、月経前の不調である月経前症候群(PMS)の緩和に有効とされるのが、規則正しい睡眠や生活、定期的な運動。カルシウムやビタミンB6、マグネシウムを積極的に摂取し、逆に脂質を控え目にすると効果があるという。

 さらにアスリートの減量の進め方について橋本さんが解説。最も重要なポイントは、筋肉量を維持しながら体脂肪量を減少させることだ。

「急速減量をする方もいますが、それは水分やグリコーゲンが失われることが多く、筋力や持久力の低下、体温調整機能の低下などの弊害があります。理想は3~6週間かけて摂取カロリーを減らしたり、運動で消費したりして調整することです」

 これを受けて入江選手は「頭ではできるだけ長い期間でゆっくり落としていった方がいいと分かっているんですけど、6週間で減量すると思うと、ちょっとウッと思っちゃう」と本音。伊藤さんも「減量していくというのはある種、試合までに精神を研ぎ澄ますことと似ていると思うので、その長さは気になります」とアスリート目線でフォロー。改めて、減量中のオススメの食べ物について橋本さんに訊ねた。

 事前にグミを購入し、食べてみたという橋本さんは「噛み応えがあるので、もしかしたら減量中にあれだけ噛めると満足感があるのかなと感じました」とコメント。入江選手も「めちゃくちゃその通りです!」と満足の返し。

 グミは糖質がほとんどで、品にもよるが、水あめや砂糖が中心なのですぐにエネルギーに変わる。ただ、運動前に摂取する分にはいいが、寝る前だとすぐにお腹が減るのではないかと橋本さんは指摘した。代わりに「腹持ちがいい」というおにぎりを提案。しかし、1個で150グラム程度あるおにぎりに入江選手は物足りなさを感じるため、同じ重量で3袋食べられるグミの方が満足感があるといい、グミからは離れられない様子だった。

 入江選手の根底にあるのは、食べ物を重量で考えるボクシング競技の特殊な思考だ。しかし、長い目で見ると、やはりアスリートは体に必要なものを摂ることが望ましい。入江選手の食生活から見えてくるのは圧倒的なタンパク質の摂取量の少なさ。

 さまざまな食材を紹介した橋本さんは、必要な栄養素に優先順位をつけながら、グミに代わるものを少しずつ摂ることで、よりコンディションが上がっていくとアドバイスを送った。入江選手は「納豆が好きなので、取り入れやすいかなと思います」とコメント。橋本さんも「頭の片隅に覚えていただいて、今後、少しずつ改善されていくといいと思います」とエールを送った。

1人暮らしで自炊をする入江選手の悩みに、橋本さんからアドバイスが送られた【写真:中戸川知世】
1人暮らしで自炊をする入江選手の悩みに、橋本さんからアドバイスが送られた【写真:中戸川知世】

1人暮らしで自炊をする入江選手の悩み、少ない食費で心がけるべきポイント

 試合に合わせた入江選手の減量は年4回程度。減量以外の期間も長い。その食生活についても話題が及んだ。

 現在は1人暮らしで自炊をする入江選手。通常は午後1時のトレーニング前に朝と昼兼用でグラノーラにヨーグルトをかけて食べる。イベント前夜は300~400グラムのパスタにカルボナーラのソースをかけて食べ、本人いわく「最悪な食事をしてしまった」と笑い、現在の悩みを明かした。

「今、学生で、親からのサポートを受けて生活が成り立っている状態なので、あまり食費にお金をかけたくないという思いがあります。できるだけ安い食費で食べたい。なので、野菜や果物は高くてあまり手が届かないので、そこが悩みです」

 少ない食費で、バランスの良い食事をする方法はあるのか。橋本さんは「安い時にまとめ買いしておくといいと思います」と助言した。

「今回、特に減量中に少しでも低カロリーで取り入れてもらいたいものとして、主食にはこんにゃくを混ぜたものやオートミールを提案します。主菜には、豆腐バーや鮭の中骨缶がオススメです。副菜は高いので難しいのですが、例えば冷凍野菜などを安い時に買い貯めしておくといい。最後に、骨を丈夫にしたり月経中の負担を和らげたりする製品として、カッテージチーズやドライフルーツなどがオススメです」

 1日の食費は500円に抑えたいという入江選手。金メダリストとはいえ、学生アスリート。多くの同年代の選手にとって共通する悩みでもあり、橋本さんは「せめてゆで卵をプラスにするだけでもいいので、なんとかタンパク質を摂取することを意識してほしい」とアドバイスした。

 1時間にわたって行われたトークセッション。良いコンディションで競技を続けるために栄養を考えた食事は必須だが、意外と難しい。競技者、保護者や指導者にとって、どんなことから意識すればいいのか。最後に、橋本さんに聞いた。

「まず一人ひとり違います。今回も入江選手の話を聞いて、まず学生なので制限があったり、食の環境が大事で、一人で努力してもどうにもならないこともあって難しさを感じました。ただバランスのとれた食事は基本です。主食、主菜、副菜といった当たり前のことができていない人が多いので、まずは自分の食生活を振り返ることが大事になると思います」

 入江選手は「分かってはいたけど、こんなにタンパク質が大事なんだと改めて感じました。今日からさっそく鶏肉を食べようと思いました」と笑顔。伊藤さんからは「この話をぜひチーム内に共有していただき、みんなで取り組めたらいいんじゃないかな」との提案があり、イベントは終了した。

 体が資本であるアスリートにとって、食事は重要な要素である。女性アスリートが自分のカラダと向き合い、自分らしく輝ける未来を作っていくためにも、競技特性に応じた栄養素をしっかりと摂取することで最高のパフォーマンスを見せてくれるのではないだろうか。

(THE ANSWER編集部)

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