[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

50m走で1.2秒短縮も 元五輪ランナーが小学生と挑戦する「480キロの遠隔指導」

陸上のアテネオリンピック1600メートルリレー代表で4位入賞した伊藤友広氏が25日に岩手・宮古市内の高浜小で行われた「東北『夢』応援プログラム」に出演した。4月から始まった1年間のかけっこ指導の中間発表を実施。50メートルの測定で1.2秒も縮めた子供が現れるなど、早くも驚きの成長を見せている。

伊藤友広氏が高浜小で行われた「東北『夢』応援プログラム」に出演【写真:村上正広】
伊藤友広氏が高浜小で行われた「東北『夢』応援プログラム」に出演【写真:村上正広】

アテネ五輪1600mリレー4位の伊藤友広氏が岩手・宮古で「夢応援」

 陸上のアテネオリンピック1600メートルリレー代表で4位入賞した伊藤友広氏が25日に岩手・宮古市内の高浜小で行われた「東北『夢』応援プログラム」に出演した。4月から始まった1年間のかけっこ指導の中間発表を実施。50メートルの測定で1.2秒も縮めた子供が現れるなど、早くも驚きの成長を見せている。

 三陸の海を臨み、浜風が吹く校庭を、颯爽と駆け抜けた。「8秒1」「8秒7」と次々とタイムがコールされる。「やったー!」と子供たちから歓喜の声が続々。充実した表情が、成長を物語っていた。そんな様子を、優しいまなざしで見守った伊藤氏。「これだけ伸びてくれるのはうれしいですね」と、自然と笑みが広がった。

 半年ぶりの再会だった。「東日本大震災復興支援財団」が協力し、アスリートなどがスポーツ指導する「東北『夢』応援プログラム」に秋田出身の伊藤氏も賛同。水泳、バスケットボール、ラグビーなど多岐にわたる競技から陸上指導で、指導役の「夢応援マイスター」を務め、4月に第1回の「夢宣言イベント」に出演。走り方の指導を行い、50メートルのタイムも測定した。

 遠隔指導を受けてきた子供で、今回参加したのは6人。実際に会うのは半年ぶりといえど、ずっとつながってきた。主にスマートフォンの遠隔指導ツール「スマートコーチ」を駆使し、指導を継続。実際に練習する動画を撮って送り、伊藤氏が映像を見てアドバイスを送る。東京と宮古の距離は480キロ。しかし、時間と距離を超えた指導で、なつかしさを感じることはなかった。

iPadなども駆使して指導を行っている【写真:村上正広】
iPadなども駆使して指導を行っている【写真:村上正広】

「速く走るために大切なことは何?」…伊藤氏の答えとは

 この日は体育館で、近隣の小学校から参加した児童も含め、約40人のかけっこ指導からスタート。「速く走るために大切なことは何?」と問いかけると「ジャンプ」「腕振り」などと声が上がったが、伊藤氏は「一番大事で、絶対に忘れないでほしいことは『姿勢』です」。骨盤を地面に対して平行に保ち、お尻が出たり、胸を反ったりせず、正しいフォームで走る大切さを説いた。

 練習では、スキップや片足ジャンプを織り交ぜながらメニューを組み、最も重要視したのはサイドステップ。「サイドステップで膝の力が抜け、踏ん張れる姿勢が取れていれば速く走れる。常にこの感覚を忘れないように」とわかりやすい言葉で話しかけ、「姿勢」を体に染み込ませていった。

 測定に入る前には、遠隔指導でアドバイスを送ってきた6人の走りを実際にチェック。伊藤氏が映像を撮りながら、個別に「走りの一歩一歩が上に行ってしまっているから、しっかりと前に進むイメージを持って」「構えがまだちょっと高いから、発射台から勢いよく飛び出せるような感覚で」などと助言し、フォームの修正を施した。

 そして、校庭に場所を移し、満を持して行われた測定では、驚きの結果が待っていた。

伊藤氏の練習で子供たちのタイムが次々と短縮する驚きの結果に【写真:村上正広】
伊藤氏の練習で子供たちのタイムが次々と短縮する驚きの結果に【写真:村上正広】

半年あまりで1.2秒短縮も…驚きの成果に子供たちも自信

 50メートルを駆け抜けた子供たちは次々にタイムを短縮した。5年生の古屋生吹君は9.3秒から8.1秒に。実に1.2秒も速くなった。女子も岩城優月さんが0.6秒を縮め、8.3秒を計測。足の怪我があった1人を除き、ベストな状態で走った5人全員が0.5秒以上タイムを短縮させたのだ。

 これには先生、保護者も大喜び。何よりも計画的に一生懸命に努力すれば、成長できると実感した子供本人が自信を掴んだ様子だった。しかし、今回は中間発表。本当のゴールは来年3月に行われる1年間の成果発表だ。

「今日はみんなと並んで走ったけど、一人で走っている時にまだまだ全力を出し切れていない。どう力を入れて走っているかをわかるためにも、普段から友達と競い合って走ることが大事になる。そして、サイドステップの感覚も忘れないでほしい。

 それができるようになると陸上だけでなく、どんなスポーツでも生きるから。今日は上手にできていたので、次に会う時はもっと上手になっていることを楽しみにしています」

 伊藤氏は最後に子供たちに語り、4か月後にさらに成長していることを期待。今後も遠隔指導を使った挑戦は続く。480キロの距離を超えて、二人三脚で駆け抜けていく。

(THE ANSWER編集部)

伊藤 友広

元陸上五輪代表

国際陸上競技連盟公認指導者資格(キッズ・ユース対象)。

1982年8月16日生まれ。秋田県出身。国際陸上競技連盟公認指導者(キッズ・ユース対象)。大曲高(秋田)で国体少年男子A400メートル優勝。アジアジュニア選手権400メートル5位、同1600メートルリレーはアンカーで優勝。国体成年男子400メートル優勝。卒業後は法大に進学。04年アテネ五輪男子1600メートルリレーの第3走者として日本歴代最高の4位入賞に貢献。現在は秋本真吾氏らとスプリント指導のプロ組織「0.01 SPRINT PROJECT」を立ち上げ、ジュニア世代からトップアスリートまで指導を行っている。
http://001sprint.com/

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
UNIVAS
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集