英語ができなくても…世界最高峰MLBで求められる日本人 「戻ってきてくれ」藤浪晋太郎の元トレーナー、仕事で海外挑戦する心得
大切なのは「飛び込む勇気と準備」
木下さんは高校までバスケ部に所属。度重なる捻挫に悩まされた自身の経験からトレーナーを目指し、大阪医専のアスレティックトレーナー(AT)学科に進んだ。ATの資格を取得し、卒業後は鍼灸の学校にも通学。ラグビーチームでの勤務を経て、2009年から日本ハムで7年、2016年から阪神で7年トレーナーを務めた。
当初は全く野球とは関わりがなかったが、日本ハムがATと鍼灸師両方の資格を持っている人を公募していたことで道が開けた。当時はメジャーで働くことなど想定外。しかし、阪神で藤浪と出会い、「もしよかったら来ていただけないですか?」と声をかけられて一変した。「めぐり合わせ。タイミング」。運も味方したと謙遜するが、成長のために快適な環境を飛び出す気概がそれを呼び寄せた。
「自分のラーニングゾーン、どうやったら成長できるかをずっと考えておくこと。英語ができなくても、わかるように、伝わるように工夫する。挑戦しようという気持ち、飛び込む勇気が大事」
アスレチックス、ドジャースに限らず、メジャーには裏方として活躍している日本人スタッフが数多くいる。将来、同じように海外で働くことを目指す人たちにアドバイスを求めると、「そんな立場じゃないですよ」と照れくさそうに笑いつつ、こう答えてくれた。
「準備しておくこと。自分がこうなりたい、こういうことをしたいという目標設定をちゃんとして、それに向けて準備するのが大事」
世界最高峰の舞台で一人挑み続ける姿は、カリフォルニアの太陽のように眩しかった。
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)