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わずか3か月で6社内定 元ヤクルト“左キラー”の転職成功談「可能性決めつけないで」

覆したい“アスリートの短絡的なイメージ”とは…

 11月下旬から始めた転職活動。「スピード感がありましたね。めちゃくちゃ忙しかったです」。当時のカレンダーは書き込まれた予定でびっしり。面接、書類作成、面接……という日々を繰り返した。寝不足もあり、プレー以外では初めて不整脈の症状が出たこともあった。

 それでも、熱意は実を結び、わずか3か月弱で6社から内定を得た。スポーツビジネスを広げていきたいという会社の方針に、自分の経験も活かせるのではないかと考え「デロイト トーマツ」を選んだ。

「スポーツ選手は『スポーツをやっていた経験しかない』と謙遜してしまう人が多いんです。でも、自分は『スポーツでこういう経験があるから、社会で活躍できます』とポジティブにアピールできたので、その点が良かったと内定後の面談で言ってもらいました」

 野球選手時代に身に着けた自己研鑽する習慣、チームのためにどんな役割で貢献できるかを考える癖は、今の仕事でも役立っているという。今後、野球を引退して次のステージに移ることになる“後輩”へ、伝えられることはあるだろうか。

「一番大事なのは、どこにゴールを置くか。人生100年時代、終身雇用がなくなっていく中で、例えば70~80歳になっても働けるようにスキルを身につけておきたい、そこに向けて自分が何をすべきか考えた時、社会で汎用性のあるスキル、社会人としての力をつけていくことが大事かなと思います」

 デジタル化、AIの発展などにより、これからの仕事はアスリートに限らず不透明。あらゆる人に訪れる可能性がある“仕事の変化”に対応できる、汎用性あるスキルを身に着けていくことが大事だと考えている。だからと言って、限定的な考え方を押し付けるつもりはない。

「一つだけ言えるのは、自分の可能性を決めつけないでほしい。『アスリート』と一括りにするのではなく、自分の得意なこと、一生懸命できることを見つめ直してほしい。野球人生が全てではなく、終わった後も新たな人生を進む中で、新しい才能を目覚めさせるチャンスはある。可能性を見つけてチャレンジしてほしいです」

 熱い思いを語ってくれた久古さんに今の仕事での目標を問うと「これを成し遂げたいというのは、正直ない」と意外な答えが返ってきた。ただ、前例がほぼないセカンドキャリアで自身が活躍することでアスリートの新しいロールモデル、働くチャンスの拡大に繋げたいという思いを抱いている。

「元アスリートでも頑張ればここまでできると、成功事例を作ることが大事だと思っています。アスリートが社会にハードルなく出られるような世界になっていってほしいと思いますし、受け入れる側も『根性がある、ガッツがある』などと短絡的なイメージではなく、もっと具体的に能力、スポーツの経験が社会にこんな形で風に活きると、認識してもらいたい。自分もどういう形になるか分からないですが、貢献できたらと思います」

 引退後、コロナ禍となる前は神宮球場で観客として試合を見たこともある。「今は運営側の立場。全然視点が違いましたね」。第二の人生を歩んでいることを実感する今、後進のセカンドキャリアを明るく照らすためにも仕事に邁進する。

(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)

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