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児童ら21人犠牲の街からメジャーへ 人口1.5万人、ユバルディに根付く「古き良き育成方法」

人口1万5000人の街からメジャーリーガーまでも輩出できるワケ

「テキサスではオールスターチームみたいなものがたくさんあるんだ。だから少なくとも僕が育った頃は、選抜チームやトラベルチーム(競技志向が強く同じレベルのチームと対戦するために遠征する)みたいなものより、コミュニティが重視されていた。すごく良いコミュニティのリーグがあったんだ。僕の高校のチームは16~18人いた選手のうち、14人か15人が、大学野球のディビジョン1やカレッジ野球、ジュニアカレッジ野球などの何らかの次のレベルの野球に進んだ。僕らはリトルリーグから高校まで、たぶん、9年間かな、一緒にプレーしてきた」

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 ユバルディでは、多くの子どもが地域のリーグに加盟するチームでプレーをする。シーズン終了近くにオールスターチームを作って対戦する。競技志向の強いトラベルチームよりも、地域重視であった。また、彼は9年間、ほぼ同じメンバーまでやってきたと話しているが、この背景について補足しておこう。アメリカは日本と違い、公立高校に進学するにあたっては、一般的には選抜試験はないので、小学校時代からの同じ仲間が、そのまま同じ高校に進むことになるからだ。

 では、なぜ小さな街から多くの大学野球選手を、さらにはあなたのようなメジャーリーガーまでも輩出できるのか。そう問うと、レイリーはこう答えた。

「僕の父はプロ野球選手だったので、よくコーチをしてくれた。それに僕らは複数のスポーツをこなそうとしていたと思う。全員でアメリカンフットボールをし、全員で陸上競技をし、何人かはバスケットボールもやった。僕らは優れたアスリートになろうとしていたんだ。チームにはホームランを打てるバッターがいたわけではなかった。でも、試合を上手く戦う方法、バントで走者を進める方法を身につけた。投球に関しては常にストライクゾーンで勝負し、堅実な守備を心がけた。こうした多くの要素が勝利につながったと思う。日本の野球も基本に忠実で優れているよね」

 レイリーの育った環境は古き良きアメリカの育成方法だといえる。野球一本に絞るのではなく、複数のスポーツを通じて器の大きいアスリートを目指す。その一方で、彼は現代的なエリート養成コースを歩んでいないので、メジャーリーガーとして生き残れるようになるまでには時間がかかったことも認めている。「9歳のとき、僕はチームで一番の選手じゃなかった。15歳のときも、チームで一番ではなかった。自分がそこまで上手くなれるとは思ってなかったんだ。大学でやった後、マイナーリーグを転々とし、KBO(韓国プロ野球)に行くことになった。十分に長くやったことで、本当に上手になる方法を学ぶことができたと思う。でも、18歳や19歳、20歳の早い段階でトップレベルを目指そうとする人もいるんだろうな。ここにいる人(クラブハウスにいるメッツのメジャーリーガー)は遅咲きが多いと思うよ」

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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