[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

「僕らは地球代表だ」世界陸上を走った6人の難民選手団 紛争に追われる1.2億人、叫ぶ「同じ人間だ」の意味

女子800メートルに出場したペリーナ・ロクレ・ナカン【写真:中戸川知世】
女子800メートルに出場したペリーナ・ロクレ・ナカン【写真:中戸川知世】

深刻化する難民問題…それでも「僕たちも同じ人間なんだ」

 UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、国境を越えて他国に避難する「難民・庇護希望者」は昨年末時点で全世界に5000万人以上。国内で自宅を離れて避難生活を送る「国内避難民」を含めれば約1億2300万人が、紛争や迫害により、避難を余儀なくされている。

【注目】日本最速ランナーが持つ「食」の意識 知識を得たからわかる、脂分摂取は「ストレスにならない」――陸上中長距離・田中希実選手(W-ANS ACADEMYへ)

 現時点で考えられる解決方法は非現実的だ。「母国へ帰ること」は紛争や人権侵害が根絶されなければ難しい。「周辺国での定住」も限度がある。そして、「第三国での定住」は手続きが難航する場合がほとんど。問題は山積みだ。

 だからこそ、難民アスリートが世界中の注目を集める舞台に立つことには意味がある。女子800メートルに出場した南スーダン出身、22歳のペリーナ・ロクレ・ナカンは「世界中の人々が、私が難民を代表するところを見ている」とARTを背負う意義を強く実感する。

「多くの人が待ってくれているの。いつか、ARTは世界でも最も大きなチームの一つになる。ここに難民なんて存在しないわ」

男子マラソンで39位と奮闘したキルフラ・エマニュエル・ンタグンガ(中央)【写真:中戸川知世】
男子マラソンで39位と奮闘したキルフラ・エマニュエル・ンタグンガ(中央)【写真:中戸川知世】

 17歳の頃、紛争により母国コンゴ共和国を追われた30歳のキルフラ・エマニュエル・ンタグンガ。棄権者が続出した男子マラソンで39位と奮闘した“難民の星”は「未来に希望を持てない人々に希望を与えたい」と1億2300万人に向けてメッセージを送る。

「ARTでプレーできることをとても嬉しく思っている。世界中の難民たちも勇気づけることが出来るから。僕たちも同じ人間なんだ。難民だからといって諦める必要はない。やりたいことは何でもできる」

 母国の威信をかけた世界陸上で戦った6人の難民選手団。国旗のない黄色いユニホームに彼らは何を背負い、走っていたのか――。それは、故郷を追われた数千万の人々の希望であり、「難民も同じ人間だ」という誇りでもあるのかもしれない。

 問いかけに、ンタグンガは迷いなく答えた。

「僕たちは地球を代表しているんだよ」

(THE ANSWER編集部・戸田 湧大 / Yudai Toda)

1 2
W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
CW-X CW-X
lawsonticket
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集